-横野視点-
「いや、別にいいんだけど」
「遠慮しないでください!!」
竹倉は、強引に俺の手元から書類を取り、「それじゃあ、行きましょう」とやけに乗り気だ。
「どこに運ぶんですか?」
「……職員室」
ぶっきらぼうに答えてもなお、竹倉は話を止める様子が一切ない。俺等は業務連絡ほどしか話したことがないと言うのにも関わらず、よく話題がつきないものだ。
「この量、1人で運ぶつもりだったんですか?どうして横野君が……」
「あのさ、竹倉」
これは、賭けだった。この質問に対して、竹倉がどう答えるのか。それが俺自身には最重要で、コイツの印象を普通で抑える最後のチャンスだった。
「はい?」
「愛川のこと、どう思う?」
「愛川さん、ですか?」
何故そのことを聞くのだ、と不思議そうにタレ目をぱちくりとさせる竹倉。少し考えた後、ゆっくりと形のいい口を開く。
「すごく、良い人だと思います」
「てめぇ……ッ!!」
俺は昔から、考えるよりも行動派だ。
昔から、つまり、今も。
ーーーーーー俺は、手に持っていた資料を投げ、竹倉を階段から突き飛ばした。
竹倉の表情は見えなかった。
あのクソ担任が無駄に多く渡してきた紙が、ただ宙を舞う。
自分がしたことに気づいたのは、聴覚が最初だった。
ドサ、重いものが重力に引き寄せられて落ちた音。次に聞こえる、甲高い悲鳴。
「竹倉君!!!!!!」
俺の目線の下で、倒れた竹倉に駆け寄る少女。それを見て、喉の奥が詰まる。
未琴、なんでお前が。
お前、ソイツに振られたんだろ。
それでもなお、どうしてそんなに竹倉に優しく接するんだ。
周りの奴等は、立ち尽くしているのに。何故真っ先に飛び込んで行けるのだ。
いつもならば「大丈夫ですよ、ご心配かけてすみません」と平謝りする竹倉も、今は動く様子がない。
ただ、頭部から赤黒い液体を流しているだけ。近くに転がった、竹倉の深緑色のフレームの眼鏡レンズが、ひび割れているのが見えた。
「先生、呼んできて貰っていい?あかりちゃん」
「あ、うん……わかった!」
頼まれた少女は、職員室の方へと急いで向かって行く。
感染したように、人の数が、ざわつきが広まる。
中には知った顔もいたが、その中の誰1人として未琴のように駆け寄って来る者はいない。
必死に竹倉の名前を呼ぶ未琴。その顔が、ふいに上を向いた。
「て、つや……?」
未琴は、泣いていた。
「いや、別にいいんだけど」
「遠慮しないでください!!」
竹倉は、強引に俺の手元から書類を取り、「それじゃあ、行きましょう」とやけに乗り気だ。
「どこに運ぶんですか?」
「……職員室」
ぶっきらぼうに答えてもなお、竹倉は話を止める様子が一切ない。俺等は業務連絡ほどしか話したことがないと言うのにも関わらず、よく話題がつきないものだ。
「この量、1人で運ぶつもりだったんですか?どうして横野君が……」
「あのさ、竹倉」
これは、賭けだった。この質問に対して、竹倉がどう答えるのか。それが俺自身には最重要で、コイツの印象を普通で抑える最後のチャンスだった。
「はい?」
「愛川のこと、どう思う?」
「愛川さん、ですか?」
何故そのことを聞くのだ、と不思議そうにタレ目をぱちくりとさせる竹倉。少し考えた後、ゆっくりと形のいい口を開く。
「すごく、良い人だと思います」
「てめぇ……ッ!!」
俺は昔から、考えるよりも行動派だ。
昔から、つまり、今も。
ーーーーーー俺は、手に持っていた資料を投げ、竹倉を階段から突き飛ばした。
竹倉の表情は見えなかった。
あのクソ担任が無駄に多く渡してきた紙が、ただ宙を舞う。
自分がしたことに気づいたのは、聴覚が最初だった。
ドサ、重いものが重力に引き寄せられて落ちた音。次に聞こえる、甲高い悲鳴。
「竹倉君!!!!!!」
俺の目線の下で、倒れた竹倉に駆け寄る少女。それを見て、喉の奥が詰まる。
未琴、なんでお前が。
お前、ソイツに振られたんだろ。
それでもなお、どうしてそんなに竹倉に優しく接するんだ。
周りの奴等は、立ち尽くしているのに。何故真っ先に飛び込んで行けるのだ。
いつもならば「大丈夫ですよ、ご心配かけてすみません」と平謝りする竹倉も、今は動く様子がない。
ただ、頭部から赤黒い液体を流しているだけ。近くに転がった、竹倉の深緑色のフレームの眼鏡レンズが、ひび割れているのが見えた。
「先生、呼んできて貰っていい?あかりちゃん」
「あ、うん……わかった!」
頼まれた少女は、職員室の方へと急いで向かって行く。
感染したように、人の数が、ざわつきが広まる。
中には知った顔もいたが、その中の誰1人として未琴のように駆け寄って来る者はいない。
必死に竹倉の名前を呼ぶ未琴。その顔が、ふいに上を向いた。
「て、つや……?」
未琴は、泣いていた。
