−俊視点−
「おたくの弟は随分とモテていらっしゃるようで」
「うん、そうだね。だって美形だし、性格も良いし」
兄としては、それに対して少し警戒を張っていたりするのだが。それは今関係のないことだろう。それに、この話題で話を広げては、説明するのに丸一日かかってしまいそうだ。
「……絶対誰にも言わないと誓え」
「……どうして?」
「じゃないと言わねぇ」
「わかった、なら誓うよ」
そんなに念を押されても、元から誰に言う気もなかった。でも、少しくらい煽っておかなきゃ気が済まない。これは、意地悪とかいうやつだろう。単なる自己満足である。
「俺には好きな女子がいる。で、最近ソイツが竹倉に告った」
「へぇ……逆恨み、っていう訳ではなさそうだけど」
彼の表情からも、今まで話してきた感覚としても、彼がそれだけで手を出すほど心の無い人間だとは思えない。
「……で、その女子はフラれた。今までなんにも言われてこなかったから、俺はそこで初めてアイツが竹倉のことが好きだったことに気がついた」
わなわなと、彼の拳が震えている。
へぇ、思い出すだけで辛いんだ。そんな風に他人事のように捉えつつ、彼の言葉の続きを静かに待つ。
「それから数日後、竹倉と俺は話す機会があった。そこで俺は聞いたんだ、「〇〇のこと、どう思う?」ってな」
「……透は、なんて?」
「竹倉には、『良い人だと思います』って返された」
横野君はそう言った後、すっかり黙ってしまった。どうやら、これで話はおしまいのようだ。
「……今の君と透のやり取りを聞いて、君が気分を害した理由が、まだオレにはわからないのだけども」
「……『良い人』でいるのも簡単じゃないってことだ」
「と、言うと?」
「フラれた相手は、フラれた瞬間も、その後も何気ないフリして笑ってた。でも、アイツは泣いてた。俺が話しかければまた平気そうなフリをされた。そんなアイツの優しさを、強さを竹倉は何も知らずに『良い人』っていう言葉だけで済ましやがった……‼︎」
だん!と壁を握り締めていた拳で強く叩きつけた。
一応病院なんだけどな、と冷静さを欠くことなく彼を見つめる。
「……透はね、鈍感なんだよ。良くも悪くもね」
きっと透は、嫌味なんて含まずに本心からそれを告げている。それが一番厄介であるということは、誰よりも理解しているつもりだ。
「……その女の子は、お見舞いに来るとは言っていたかい?」
「……さぁ、聞いてねぇよ」
「まだ家族以外の面会は始まってないから、どっちにしろ今日君には透と合わせられない。一週間後から、それ以外の人達も面会が出来るようになる。その時に、その子と一緒においで。その時は、会わせてあげるからさ」
は?と横野君は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていた。オレが透との面会を許可するのが意外だったのだろう。
「まだ透のことは許してないみたいだけど、それなりに申し訳ないとは思ってるみたいだしさ。特別に容疑者君と透が関わるチャンスを与えよう」
「……やけに上からだな」
「そりゃあ、お兄様ですから」
今日、そこで初めて横野君がオレに笑顔を見せた。
「おたくの弟は随分とモテていらっしゃるようで」
「うん、そうだね。だって美形だし、性格も良いし」
兄としては、それに対して少し警戒を張っていたりするのだが。それは今関係のないことだろう。それに、この話題で話を広げては、説明するのに丸一日かかってしまいそうだ。
「……絶対誰にも言わないと誓え」
「……どうして?」
「じゃないと言わねぇ」
「わかった、なら誓うよ」
そんなに念を押されても、元から誰に言う気もなかった。でも、少しくらい煽っておかなきゃ気が済まない。これは、意地悪とかいうやつだろう。単なる自己満足である。
「俺には好きな女子がいる。で、最近ソイツが竹倉に告った」
「へぇ……逆恨み、っていう訳ではなさそうだけど」
彼の表情からも、今まで話してきた感覚としても、彼がそれだけで手を出すほど心の無い人間だとは思えない。
「……で、その女子はフラれた。今までなんにも言われてこなかったから、俺はそこで初めてアイツが竹倉のことが好きだったことに気がついた」
わなわなと、彼の拳が震えている。
へぇ、思い出すだけで辛いんだ。そんな風に他人事のように捉えつつ、彼の言葉の続きを静かに待つ。
「それから数日後、竹倉と俺は話す機会があった。そこで俺は聞いたんだ、「〇〇のこと、どう思う?」ってな」
「……透は、なんて?」
「竹倉には、『良い人だと思います』って返された」
横野君はそう言った後、すっかり黙ってしまった。どうやら、これで話はおしまいのようだ。
「……今の君と透のやり取りを聞いて、君が気分を害した理由が、まだオレにはわからないのだけども」
「……『良い人』でいるのも簡単じゃないってことだ」
「と、言うと?」
「フラれた相手は、フラれた瞬間も、その後も何気ないフリして笑ってた。でも、アイツは泣いてた。俺が話しかければまた平気そうなフリをされた。そんなアイツの優しさを、強さを竹倉は何も知らずに『良い人』っていう言葉だけで済ましやがった……‼︎」
だん!と壁を握り締めていた拳で強く叩きつけた。
一応病院なんだけどな、と冷静さを欠くことなく彼を見つめる。
「……透はね、鈍感なんだよ。良くも悪くもね」
きっと透は、嫌味なんて含まずに本心からそれを告げている。それが一番厄介であるということは、誰よりも理解しているつもりだ。
「……その女の子は、お見舞いに来るとは言っていたかい?」
「……さぁ、聞いてねぇよ」
「まだ家族以外の面会は始まってないから、どっちにしろ今日君には透と合わせられない。一週間後から、それ以外の人達も面会が出来るようになる。その時に、その子と一緒においで。その時は、会わせてあげるからさ」
は?と横野君は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていた。オレが透との面会を許可するのが意外だったのだろう。
「まだ透のことは許してないみたいだけど、それなりに申し訳ないとは思ってるみたいだしさ。特別に容疑者君と透が関わるチャンスを与えよう」
「……やけに上からだな」
「そりゃあ、お兄様ですから」
今日、そこで初めて横野君がオレに笑顔を見せた。
