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夏空哨戒班
- 第一幕/曇天 -

哨戒班、俺はその班の一員。

今では班じゃない、俺一人だけだ。

昔はもっと賑やかだった室内も、なにもかも。



皆消えた。死んでいった。


この国は戦争国家だ。敵も多い。空襲も多い。
俺は………それらを見回る係。
哨戒……つまりはパトロールだ。

この日だって二人死んだ。

曇天はまるで俺を嘲笑うかのように、雷鳴を轟かせる。



「ねぇ、何してるの? 雨降りそうだよ」

「…………誰だよ。お前」

敵意を籠めて睨んだつもりだったが、意味がなかった。
傘を俺に渡した君は、柔らかく笑う。


「十六夜っていうの。変な名前でしょ? 怪我もしてるし、もう帰った方がいいんじゃない? 今日は空襲が無いって月之も言ってた」


空襲が無いって?
それはどうだかな。

「その月之とかいうのは、なんにもわかってねえよ。いつ来るかもわからん」


「………貴方、哨戒班の人?」

「あぁ、国家の奴隷さ」









「逃げたい、とか想わないの?」


逃げたい、か。
想うさ。けど、叶わないんだ。



「想ったところで無駄だろ? それならもっと、現実的なのがいい。例えば…………暖かい飯が食いたい」

「っふぷ、あははっ、はぁ、はぁ、お腹…イタい」

「失礼な奴だな」



「あっ………ごめんなさい。それが普通じゃないもんね。ごめん…………怒った?」


「別に」

素っ気なく言うと、十六夜はおろおろとし始める。

「ごめんね、ごめんね。あのね、家に来て。ちょっとした償い! ね。行こう」

「だから、いつ空襲が…………」





「今日は大丈夫!」


俺の手を引く十六夜の言葉を、俺は意味もなく信じてしまった。


<2016/12/03 13:00 霜月鈴妖>消しゴム
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