「はい。どうぞ、召し上がれ」
「……いただきます」
十六夜の家は父も母も居ないようで、俺を上げても止める者がいないと言う。
「どうどう? 美味しい? 今日のは自信作だよ」
出てきたのは………何だろう。
赤い飯に黄色いのが乗ってる。
「これって……なんて飯?」
十六夜の表情が固まった。
「ごめん。私はそれをどうとればいいのか……」
「いや……美味しいけど。普通に。なんて名前かと」
「あ、なんだ、よかった。美味しくないかと……それはね、オムライスって言うんだよ」
明るくなる表情。背景まで変わってくるようだ。
「オムライス、か」
「うん、ねぇ……」
「君の名前は、なんていうの?」
名前……か。
わからんな。
基より無いものだ。
「無いよ。名前なんて」
大きな目を、また大きく開き、驚いた顔。
「じゃあ………私がつけていい!?」
「………………は?」
「いいじゃんか~………えっとね、う~ん………」
あれやこれや呟きながら目を輝かせる。
勢いが強い………止められない………
考えたところで、呼ぶ人もいないのだが。
「そうだ! 夜明はどう?」
「や…みょう?」
「そう、夜だけじゃ寂しいでしょう? でも、呼ぶ時は夜の方が言いやすいかなぁ」
「ね、どう?」………母親も知らない。愛も、名前なんて、つけてもらうことすら…………
「………嬉しいよ」
その日は、自分が国家の奴隷だ、等ということを、すっかりと忘れていた。
