姫乃くんと彼方ちゃん
- 彼方の悩みは -
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「ここが新しい学校……」
真新しい校舎を見上げ、私はただ唖然としていた。
まさか、こんなにも美しい学校がこの世にあるとは。
青々と繁る若葉が、真夏の日射しで照らされて眩しい。手入れの行き届いた校庭の先に待っていたのは、汚れひとつ無い、真っ白い校舎だった。
私、桜井彼方(サクライ カナタ)は、7月6日の今日、この私立創栄学園に転校してきた。
新しい学校に馴染めるかと、不安と期待で、胸が張り裂けそうな思いだ。
「大丈夫、大丈夫……か、髪型とか、変じゃないよね!?」
手鏡を覗きこみ、前髪を整える。
準備は万端だ。
「…よしっ!頑張るぞー!!」
昇降口前で謎の気合いをいれてから、私は校舎へと歩みを進めた。
「…えっと、君が桜井彼方さんでいいのかな?」
「は、はい…」
「そう。…じゃあ、そろそろHR始めるから、呼んだら入ってきてね。」
そう言うと、私が今日から入るクラスの担任は、教室へと入っていった。
柏木薫(カシワギ カオル)、おそらく20代後半位の女の先生だ。端正な顔立ちに、黒ぶちの眼鏡がよく似合う。
胸の鼓動が、どんどん早くなっていく。廊下に一人残されるのは、なかなか辛いものだ。
ひとつ、ため息をついたその時だった。
「今日来る転校生って、どんな子?」
「なんかー…名前は、彼方っていうんだって!」
「えー!イケメンだといいなぁ~…」
女子達の会話が聞こえてくる。
いや、どこで私の名前知ったんだよ。
…しかし、それ以上に辛いのは
「……また、男と間違われてるのか…」
今度こそ、大きくため息をつく。
イケメンなわけないじゃん。そもそも女だし。
まあ、そんな声誰にも届くことはないのだが。
昔から、彼方、という男のような名前にコンプレックスを抱いてきた。
小さな頃は、よくからかわれたものである。
名前に負けないように、出来るだけ女らしくなろうと努力した。
髪を伸ばして丁寧にケアして、服も可愛らしいデザインのものを買った。他にも色々やった。
…けど、この名前は、どこまでも私にまとわりついて離れない。
「…まあ、いつものことだけどね。」
そう呟くのとほぼ同時に、教室から私を呼ぶ声が聞こえた。
教室へと足を踏み入れる。出来るだけ、先程のショックを顔に出さないように真顔で。
薫「今日からこの1年2組に転入してきた、桜井彼方さんです。」
教室の皆の反応は、色々だった。
ひそひそ話をする者、ジッとこちらを見つめてくる者…
けど、最も多かったのは
桜井彼方が、男ではないという事実への、驚き。
「え…彼方って子、女なの!?」
「嘘~…びっくり!」
「え~……ショック…」
いやいや、ショックだろうと知ったこっちゃないですけど。
言いたいのを堪えながら、自己紹介を始めた。
彼「桜井彼方です。古ヶ崎高校から転校してきました。宜しくお願いします。」
第一印象は大切だ。
出来るだけハキハキと、明るく、笑顔で話す。
このおかげか、クラスでの印象は、まあ悪くはなかった。
薫「桜井さんの席は…じゃあ、姫乃の隣ね。」
姫乃、可愛い名前だ。きっと物凄く可愛い女の子なんだろうな。
そう思って先生の視線を辿った先にいたのは、可愛い女の子なんかじゃない。
華奢だが、程よく筋肉のついた身体、揺れる黒髪、美しい顔。
紛れもなく、男だった。
薫「じゃあ桜井さん、姫乃と仲良くしてやってね。」
彼「わ、分かりました…」
指定された席へと向かい、腰をかける。
ふと、隣の「姫乃くん」と目が合う。
彼「あ、あの……えっと……」
上手く話せない。なんでこんな時に緊張してしまうのか。
モヤモヤとしていた、その時だ。
姫「…そんな緊張すんなって、な?」
優しく微笑むのは、隣の男子。
先程まで女だと思っていた、彼。
姫「俺、三島姫乃(ミシマ ヒメノ)。よろしくな。」
何故だろう。これまでの不安と緊張が、全部消えてなくなった気がした。
彼「…うん!よろしく!」
姫乃くんと、仲良くなりたい。
そんな気持ちだけが、頭のなかでぐるぐると渦巻いた。
真新しい校舎を見上げ、私はただ唖然としていた。
まさか、こんなにも美しい学校がこの世にあるとは。
青々と繁る若葉が、真夏の日射しで照らされて眩しい。手入れの行き届いた校庭の先に待っていたのは、汚れひとつ無い、真っ白い校舎だった。
私、桜井彼方(サクライ カナタ)は、7月6日の今日、この私立創栄学園に転校してきた。
新しい学校に馴染めるかと、不安と期待で、胸が張り裂けそうな思いだ。
「大丈夫、大丈夫……か、髪型とか、変じゃないよね!?」
手鏡を覗きこみ、前髪を整える。
準備は万端だ。
「…よしっ!頑張るぞー!!」
昇降口前で謎の気合いをいれてから、私は校舎へと歩みを進めた。
「…えっと、君が桜井彼方さんでいいのかな?」
「は、はい…」
「そう。…じゃあ、そろそろHR始めるから、呼んだら入ってきてね。」
そう言うと、私が今日から入るクラスの担任は、教室へと入っていった。
柏木薫(カシワギ カオル)、おそらく20代後半位の女の先生だ。端正な顔立ちに、黒ぶちの眼鏡がよく似合う。
胸の鼓動が、どんどん早くなっていく。廊下に一人残されるのは、なかなか辛いものだ。
ひとつ、ため息をついたその時だった。
「今日来る転校生って、どんな子?」
「なんかー…名前は、彼方っていうんだって!」
「えー!イケメンだといいなぁ~…」
女子達の会話が聞こえてくる。
いや、どこで私の名前知ったんだよ。
…しかし、それ以上に辛いのは
「……また、男と間違われてるのか…」
今度こそ、大きくため息をつく。
イケメンなわけないじゃん。そもそも女だし。
まあ、そんな声誰にも届くことはないのだが。
昔から、彼方、という男のような名前にコンプレックスを抱いてきた。
小さな頃は、よくからかわれたものである。
名前に負けないように、出来るだけ女らしくなろうと努力した。
髪を伸ばして丁寧にケアして、服も可愛らしいデザインのものを買った。他にも色々やった。
…けど、この名前は、どこまでも私にまとわりついて離れない。
「…まあ、いつものことだけどね。」
そう呟くのとほぼ同時に、教室から私を呼ぶ声が聞こえた。
教室へと足を踏み入れる。出来るだけ、先程のショックを顔に出さないように真顔で。
薫「今日からこの1年2組に転入してきた、桜井彼方さんです。」
教室の皆の反応は、色々だった。
ひそひそ話をする者、ジッとこちらを見つめてくる者…
けど、最も多かったのは
桜井彼方が、男ではないという事実への、驚き。
「え…彼方って子、女なの!?」
「嘘~…びっくり!」
「え~……ショック…」
いやいや、ショックだろうと知ったこっちゃないですけど。
言いたいのを堪えながら、自己紹介を始めた。
彼「桜井彼方です。古ヶ崎高校から転校してきました。宜しくお願いします。」
第一印象は大切だ。
出来るだけハキハキと、明るく、笑顔で話す。
このおかげか、クラスでの印象は、まあ悪くはなかった。
薫「桜井さんの席は…じゃあ、姫乃の隣ね。」
姫乃、可愛い名前だ。きっと物凄く可愛い女の子なんだろうな。
そう思って先生の視線を辿った先にいたのは、可愛い女の子なんかじゃない。
華奢だが、程よく筋肉のついた身体、揺れる黒髪、美しい顔。
紛れもなく、男だった。
薫「じゃあ桜井さん、姫乃と仲良くしてやってね。」
彼「わ、分かりました…」
指定された席へと向かい、腰をかける。
ふと、隣の「姫乃くん」と目が合う。
彼「あ、あの……えっと……」
上手く話せない。なんでこんな時に緊張してしまうのか。
モヤモヤとしていた、その時だ。
姫「…そんな緊張すんなって、な?」
優しく微笑むのは、隣の男子。
先程まで女だと思っていた、彼。
姫「俺、三島姫乃(ミシマ ヒメノ)。よろしくな。」
何故だろう。これまでの不安と緊張が、全部消えてなくなった気がした。
彼「…うん!よろしく!」
姫乃くんと、仲良くなりたい。
そんな気持ちだけが、頭のなかでぐるぐると渦巻いた。
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