冷たい闇
- 1青い瞳 -
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「コツ・・コツ」静まり返ったカルテ室の中に冷酷さを感じさせるヒールの音が響いた。
女はひとつの棚の前で立ち止まる。そして灰色のファイルを取り出した。「藤堂 康夫。56歳 藤堂コーポレート社長。 肺がん。ステージ2。タバコの長期による摂取のため。」ここまで読んで、ふぅとため息をつく女。「今回は自殺がいいかしら。それとも病死。どうしましょう。」その女はナース帽から少し見えた前髪を耳にかけた。
1「藤堂社長、光嶋産業が我社との契約を結んでくれるようです!」社員の谷島 裕二(32)がデスクの受話器を片手に満面の笑みでこっちを見ている。
「そうか。それは良かったな。やったぞ谷島」
「いえいえこうなったのも全部社長の素晴らしいスピーチや丁寧な応対のおかげです。本当に感謝をしております。」
私は谷島の手を強く握る。会社の業績は鰻のぼり、企画を発案すればすべてうまくいく。一次バブル崩壊時に衰えを見せたものの今や我社はバブル時代全盛期の景気の良さを上回るほど景気が良いのだ。世の中は8割がかねのチカラで動かせる私はそう思っている。地位も権力も名誉も。私は一人タバコを片手にフゥーっと息を吐く。私はカネのチカラで数々の問題をもみ消してきた。いくら強い恨みを持つ人間でもカネを与えればニコニコして帰っていく。「藤堂社長、人間ドッグの検査が本日16時ごろ藤堂コーポレート医療センターの1階検査室で行われます。それでなのですが・・タバコは控えていただかないといけないと三村先生がおっしゃっていました。」仕事を完璧にこなすうちの有望な人材、瀬谷 麻里子が企画書のたくさん詰まったファイルを胸に遠慮がちに口を開いた。彼女は容姿端麗、頭脳明晰のスーパーレディだ。その点、男どもに狙われやすいのかしょっちゅう食事に誘われて断っている瀬谷の姿をよく見かける。とまあそんなことはどうでも良いのだが
女はひとつの棚の前で立ち止まる。そして灰色のファイルを取り出した。「藤堂 康夫。56歳 藤堂コーポレート社長。 肺がん。ステージ2。タバコの長期による摂取のため。」ここまで読んで、ふぅとため息をつく女。「今回は自殺がいいかしら。それとも病死。どうしましょう。」その女はナース帽から少し見えた前髪を耳にかけた。
1「藤堂社長、光嶋産業が我社との契約を結んでくれるようです!」社員の谷島 裕二(32)がデスクの受話器を片手に満面の笑みでこっちを見ている。
「そうか。それは良かったな。やったぞ谷島」
「いえいえこうなったのも全部社長の素晴らしいスピーチや丁寧な応対のおかげです。本当に感謝をしております。」
私は谷島の手を強く握る。会社の業績は鰻のぼり、企画を発案すればすべてうまくいく。一次バブル崩壊時に衰えを見せたものの今や我社はバブル時代全盛期の景気の良さを上回るほど景気が良いのだ。世の中は8割がかねのチカラで動かせる私はそう思っている。地位も権力も名誉も。私は一人タバコを片手にフゥーっと息を吐く。私はカネのチカラで数々の問題をもみ消してきた。いくら強い恨みを持つ人間でもカネを与えればニコニコして帰っていく。「藤堂社長、人間ドッグの検査が本日16時ごろ藤堂コーポレート医療センターの1階検査室で行われます。それでなのですが・・タバコは控えていただかないといけないと三村先生がおっしゃっていました。」仕事を完璧にこなすうちの有望な人材、瀬谷 麻里子が企画書のたくさん詰まったファイルを胸に遠慮がちに口を開いた。彼女は容姿端麗、頭脳明晰のスーパーレディだ。その点、男どもに狙われやすいのかしょっちゅう食事に誘われて断っている瀬谷の姿をよく見かける。とまあそんなことはどうでも良いのだが
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