おためし小説投稿

登録一切不要で小説投稿!
文字サイズ変更 
薄桜鬼ー雪光録ー
- 序章 時渡り -



よく晴れた春の日。
僕、藤堂真雪は飴を舐めながら外をぼんやり眺めていた。
ぽかぽかした陽気は、どうも眠たくなる。
心地よいまどろみに包まれ、僕はそのままそっと目を閉じた。
………はずだったんだけど。
「真雪。まっしぃろっ!」
お父様に顔を覗き込まれ、それをやめた。
クリクリした目に、短い茶髪。
年からは想像も出来ない若い見た目。
性格も合わさってとても父親とは思えない。
お父様にこれを言うと拗ねちゃうから、言わないけれど。
「どうしたの?」
「ちょっと…今から歌恋の部屋に来てくれねえ?」
歌恋、とは僕のお母様。
茶色いサラサラの髪の毛に、ぱっちりとした大きな瞳。桜色の唇に真っ白な肌。
またまた若い見た目で、とても綺麗。僕の自慢のお母様。
「わかった。」
僕は返事と共に立ち上がり、お母様のお部屋に向かって歩き出した。

「お母様?」
お母様のお部屋の前でそっと声をかけると、直ぐに鈴を転がすような綺麗な声が聞こえてくる。
「真雪ですか?」
「入っても「はい、待ってました!」
……お母様が急に障子を開けるから僕はびっくりして、ひゃぁ!?なんて声を出してしまった。
お母様はそんな僕を見てクスクスと笑う。
「可愛い反応ですねぇ。
まあ、入ってくださいね。」
「え、うん…」
何だか嫌な予感がして、そろりと足を踏み入れる。
お父様も直ぐ後に次いで入ってきた。
「こうして呼んだのは、真雪にある試練をあげるためです。」
「……ある、試練?」
きょとんとした声を出す僕。
対してお母様はニコリと笑った。
お母様の話によると…。
・お母様の家には代々伝わる時渡りをさせる秘宝がある
・それはその代で一人しか使えない
・お母様の時はお母様が行って、計十四年間も遠い未来に居た
・僕の代は僕しかいない
・僕が行くしかない
「……と、言うわけなんです。」
「……………えっ?」
僕の中に疑問ばかり残るのがお母様達にもわかったようで。
苦笑いをしながら、僕に整理をする時間をくれた。

少し、経ったけど。
未だよくわからない。
時渡りなんて本当にあるのかわからないし、でもお母様が十四年間も未来に居たことは確かみたいだし。
しかも、もしかしたらもう戻れないかもしれない。
「………やっぱり、嫌ですよね。」
お母様の一言が、ずんと胸に響く。
確かに、嫌だ。
でも、これが僕に与えられた運命なら。
「行く、僕。
月色の血筋に生まれた者として、その運命を背負います。」
そう言って真っ直ぐ二人を見据えると、二人は少し驚いた顔をした。
でも、直ぐ安堵の表情になる。
「…真雪ならそう言うと思いました。」
ぽんぽんと頭を撫でながら、お母様は優しく声をかけてくれた。
そのあと、ぎゅっと僕を抱きしめる。
「……ああ、私の方が不安かも。やっぱり、こんな可愛い真雪を大変な目に会わせたくないです…」
今度は、お父様が僕とお母様を一度に抱きしめた。
「………大丈夫。きっと、真雪なら大丈夫だ。」
二人に挟まれ、ちょっときついけど暖かくて。
いつぶりだろ、こういうふうにしてもらったの。
少し恥ずかしいけど嬉しくて、僕は笑みをこぼした。

「さて、真雪。」
次の日。
こんな早くだとは思わなかった。
でも昨日のうちに心の準備はしてある。
一つ深呼吸をして、僕はお母様に一歩歩み寄った。
「……行ってきます。」
「「……行ってらっしゃい。」」
お互い顔を合わせて微笑む。
泣かない。笑顔で行くんだ。
そう言い聞かせながら、僕はお母様の手にある秘宝……かんざしを手に持つ。
このかんざしに埋められた石に少しでも触れると時渡りをするらしい。
「……僕、幸せだった。お母様と、お父様達に囲まれて。」
「……なら、良かったです。」
お母様は微笑んでくれたけど、酷く寂しげで。
思わずしゃくりあげるように泣きそうになった。
泣かない。決めたんだ。
僕は一つ息を吸うと、そっと石に触った。
その途端光のようなものに包まれて…………僕の意識は闇に落ちていった。





初めましての方は初めまして、前作から読んでくださる方はありがとうございますっっっ!!serena(改め水瀬玲)です。
前回とはまた違う感じのお話に、レベルアップしたお話にしたいと思います。よろしくお願いします!
<2016/11/26 16:45 水瀬 玲>消しゴム
Copyright(C) おためし小説投稿 Since2013 All Rights Reserved.