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薄桜鬼ー雪光録ー
- 第九話 風邪 -




「また伊東さんですか?」
「うん、伊東さん。僕あの人嫌なんだよねー…」
皆さんこんにちは、藤堂真雪です。
「わざわざそれを言うためにきたんです?」
「だって歌恋ちゃんも真雪ちゃんもずるいよ……あの人と関わってないなんてさあ。」
「そりゃあ私たち風邪っぴきですしね。これを理由にさけられるってもんです。」
「うわ、正直に言ったよこの子……」
現在絶賛、風邪っぴきです。



一応少し雑にだけども看病をしてくれながら、ひたすら伊東さん…だとかいう新しく入隊した人についての愚痴をこぼす総司さん。
組長さんだから、大変なこともやっぱりあるのかな。だったら僕にできることはそれを聞くことだけだけど…。
今僕たちが寝ている部屋は歌恋さんのお部屋。最初は僕と斎藤さんのお部屋だったのだけど、そのあと歌恋さんに移してしまってから土方さんにまとめられた。
「真雪。月色。いるか?」
「どうぞお。」
歌恋さんの返事で、障子が静かに開く。
目の下あたりまで伸びた艶やかな黒髪を左側にわけ、つまり右目だけを覗かせた前髪。
見ていると引き込まれてしまいそうな深い深い藍色は、白い肌によく映える。
華奢ながらも背はやや高めで、多分一さんと同じかそれ以上。
そんな要するにとてもとても格好いい一番組隊士さん……山野八十八さんが、そこに立っていた。
「八十さん。」
「具合はどうだ?」
八十さんの声は低くて、聞いててどこかほっとする。
八十さんは上の方に一つにまとめた長い髪の毛を揺らしながら、僕の顔を覗き込んできた。
「微妙……です。熱はだいぶ下がったとは思うんですが……」
「真雪ちゃんは咳が酷いんです。」
歌恋さんが起き上がりながら言うと、八十さんは不安げに眉をひそめた。
「……いや月色。お前も病人なんだから寝ていろ。
咳、か……。後で山崎に何か効くものを聞いてくるな。
…ああ、熱はだいぶ下がったようだ。月色はまだ熱いな。取り敢えず寝ろ。こら、起きるな。」
「暇なんですよお。」
歌恋さんの不満そうな声に、八十さんは静かに微笑む。
その笑みには、物凄い圧がかかっているような気がして。
僕と歌恋さんは二人して凍りついた。
「ねえ、僕空気なんだけどー。」
「あっ…申し訳ありません組長…!」
「…本気で今気づいたの。」
じとっとした目でこちらを見てくる総司さんに、八十さんは慌てて謝る。
その様子がおかしくて、僕はつい小さく笑ってしまった。
「何、真雪ちゃん。」
「あっ、いえ何も…」
途端に総司さんに軽く睨まれる。
歌恋さんはそんな僕たちを見て吹き出した。
「もう、仲が良いですねえ。
そういえば総司君と八十さんは今日巡察じゃないんですか?」
「そういえば、今日のお昼って一番組ですよね。」
言いながら二人を見ると……。
「……組長………その…」
「………うん、そうだね………」
「「………忘れてた……」」
二人して忘れていたみたいだ。
二人は顔を合わせてから、すくっと立ち上がる。
「はい、いってらっしゃい♪」
「ああ…」
「うん…」
歌恋さんの声を合図にしたかのように、二人はどたばたと屯所を走っていった。
「組長ぉぉお!!!誰よりも忘れちゃいけない人が何呑気に愚痴こぼしてるんですか!」
「山野君だってこっちにきてたじゃん!」
「取り敢えず急ぎますよ!!!」
少ししてから急に静けさが戻ってくる。
歌恋さんは一つ笑みをこぼして、布団に潜り込んだ。
「もう一眠りしますかぁ……ここ三日間で一週間分くらい寝てる気がしますね。」
「僕はもう一週間に届きそうです…」
ついため息を吐いてしまう。
風邪としての症状は殆ど治ったけれど、依然咳は止まないし体が重い。
「頭がぼぉーっとします…」
思わずそう呟くと、歌恋さんは途端に心配そうにこちらを覗き込んできた。
「大丈夫ですか?山崎さんにーー」
「だっ、大丈夫です!」
急いで遮る。
山崎さんにいちいち迷惑かけていられないし、寝ていれば治ると思う。
何より……
「寝すぎだから、かもしれませんし…」
「あー……」
こんな理由だったら恥ずかしいよ。

雪光録関係ないのですが、月光録閲覧者数3000人突破しました!ありがとうございます(*≧∀≦*)
これからも月光録、桜魂録、そして雪光録と浅葱色の華をよろしくおねがいします!
<2017/01/05 16:19 水瀬 玲>消しゴム
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