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薄桜鬼ー雪光録ー
- 第十話 風邪・続 -




熱も結構下がって、漸く布団から起きていても何も言われなくなってきた。
でもまだ巡察や稽古には出してもらえず、現在歌恋さんと部屋でいじけています。
「だってぇ、私なんかもう殆ど治ってるじゃないですか!真雪ちゃんはともかく、私は行っても良くないですかあ?暇ですよー。」
「僕だって行きたいですー…」
「真雪ちゃんはまだ咳も出てるし微熱もあるでしょう?」
「歌恋さんだってくしゃみ五連発してましたあ。」
「むぅ…」
言葉に詰まった歌恋さんは、むくれてそっぽを向いた。
部屋を、静かに風が通っていく。
「「……暇ですね。」」
つい、言葉も重なった。
やる事が無さすぎて、土方さんのお仕事を手伝いたいくらい。
…でも、また頭にあの痛い拳骨を落とされるかと思うと……。
「すまぬ、居るか?」
「一君じゃないですか。どうぞ。」
不意に聞こえて来た足音と凜とした声に、歌恋さんは少し気だるげに答えた。
次の瞬間、音もなく障子が開く。
「怠そうな声だが…まだ熱があるのか?」
「暇疲れですよ、暇疲れ。
で、どうしたんですか?」
歌恋さんの返答にフッと笑うと、一さんは懐から包みを取り出した。
ふわり、と甘い香りが漂う。
「総司に美味いと聞いていた菓子屋で団子を買ってきた。帰って来る前に食え。」
「ありがとうございます!
…あれ、総司さんどうしたんですか?」
「巡察だ。」
「あっ…」
そういえばさっきこの前みたく八十さんとドタバタ走って行ったなあ…なんて思い出し、僕は苦笑した。
「歌恋ちゃん、真雪君、お茶持ってきたよ。」
また声がかかる。
「千鶴ちゃんですか?ありがとうございます。」
歌恋さんは直ぐに誰だか判断できて凄いなあ…。
特に平助さんの真似をして声をかけた総司さんを一発で当てたの凄かった…僕わからなかったのに。
「あ、斎藤さん…丁度良かった。後でお持ちしようと思っていたんです。
沖田さんは…いらっしゃらないですか…。」
「総司君なら巡察なのでしばらく帰ってきませんよ。
だから千鶴ちゃんも食べましょ?」
「えっ…良いんでしょうか…」
「構わん。茶も…冷めないうちに飲まれるのが本望だろう。」
一さんの言葉に、歌恋さんが必死に笑いをこらえているのがよくわかった。
んふっ…なんて聞こえてきたし、肩を震わせている。
一さんは御構いなしなのか気づいていないのか、綺麗な指先で包みを開いた。
先ほどから漂っていた良い香りが、一層強くなる。
「わあぁ……美味しそうですね。」
歌恋さんはキラキラと目を輝かせて声を弾ませた。
僕も思わず目を輝かせてしまう。
歌恋さんが一つ手に取ったのを合図に、僕たちも一斉にお団子に手を伸ばした。
「んっ!これ、美味しいです…!」
「本当に美味しいんですね!流石総司君。」
「美味しい…何処のお店ですか?」
「……名前を忘れたが、向かいに豆腐屋があった。」
向かいに豆腐屋さんがあるところ……ここから少し離れているところにあったかもしれない。
総司さん、流石です……目ざとい…!
「お団子がこんなに美味しいんなら、お饅頭辺りも美味しそうですね!今度みんなで行ってみませんか?」
「行きたい!」
「行きたいです!」
「…風邪を治してからな。」
「「……はい。」」
浮き立った気持ちを一瞬で冷まされ、僕たちはしゅん…と項垂れた。
千鶴ちゃんはそんな僕たちを見て苦笑い。
「頑張って早く治してね。そしたら行こう?」
「「千鶴ちゃん……!」」
何だろう、よくわからないけど千鶴ちゃんに後光が見えた…!
「真雪と月色は…よく似ているな。」
一さんがふと呟いた言葉に、僕と歌恋さんは揃って首をかしげる。
そんなに似てるかな……外を歩いたときも言われたけど、僕は歌恋さんみたいに綺麗じゃないのに…。
「「そんなに似てますか?」」
僕達がそう言うと、一さんは小さく笑った。
「そういう所だ。」
「「そういう所…」」
今度は千鶴ちゃんまで笑いだす。
「二人は言葉がよく被るから、じゃないかな。表情とかも似ているし…」
「「…」」
僕がつい歌恋さんの方を向くと、歌恋さんもこちらを向いたようで、目があった。
思わず二人で笑ってしまう。
「あははっ、本当にセリフとか行動とか被りますね!」
せりふ、って何だろう。
きょとん、と一瞬なったけど…まあ良いや。
「そうですね。」
「揃って風邪をひいて寝込んでいるしな。」
「「もう治りましたもん!!」」
「…ふふっ。」
またもや重なった言葉に、千鶴ちゃんが口に手を当てて笑い声を上げる。
それをきっかけに、四人で声をあげて笑ってしまった。
そんな様子を、たまたま通りかかった土方さんに見られ、(主に一さんを)二度見されたのは、多分僕しか気がつかなかっただろう。

(…お、だいぶ元気になったみてぇじゃn……………!?!?斎藤!?!!?……いや、これは見間違いだ……次見たときには総司あたりになっているはずd……斎藤!?!?)
って感じですかね、最後の土方さん。
<2017/01/16 21:33 水瀬 玲>消しゴム
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