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薄桜鬼ー雪光録ー
- 第十二話 お団子 -




「こ、ここがあの…!」
「今更何怖気付いてんの?さっさと行くよ。」
結局八十さんは用があって来れなくて、僕は総司さんと共にあのお菓子屋さんの前にいる。
相変わらず賑わっているお店だ。
「あ、沖田様!いらっしゃいませ、今日は何にしますか?」
ここ、京の町では珍しい東言葉。
あの…看板娘の方だ。
ふんわり笑う姿がとても可愛らしくて、僕は思わず息を飲む。
「んー…、団子かな。」
「かしこまりました。
そちらの方は…?」
女の人は僕を不思議そうに見た。
…総司さんが誰か連れているのは珍しいのかな?
「ああ…最近入隊した藤堂真雪ちゃん。結構腕が立つんだ。」
「そうなんですね!
私は珠紀です。よろしくお願いします!」
「あっ、はい!藤堂真雪です、よろしくお願いします。」
花が咲いたような笑顔に、顔が赤くなっていくのを感じる。
声が上ずってないか、少し不安…。
綺麗な人は歌恋さんや千鶴ちゃんで見慣れているはずなのに、何故だかとても恥ずかしかった。
「ここのお団子が美味しかったみたいで、ずっと行きたいって言ってたんだ。
あ、土産にもしたいから…そうだな、六本くらいもらえる?」
歌恋さんたちの分かな。
思っていたよりも優しい総司さんに、少し驚く。
「…何か余計なこと考えてない?」
「い、いえ!何も!!」
そんな僕たちを見て、珠紀さんはクスッと笑った。
「すぐにご用意させていただきますね。」



あれから少ししてきたお団子を頬張りながら、僕と総司さんはたわいもない話をする。
「んでさー、あいつとあいつは絶対恋仲だと思うんだよね。空気でもう察するっていうか……そう思わない?」
「あの方とあの方が………初めて知りました。」
「えっ。結構わかりやすいと思ってた…」
…何が楽しくて隊内の男色事情を知らなければならないのでしょう………。
い、いや男色がダメというわけではないんだけど…。
「あとはさ、歌恋ちゃんと平助って結構仲良いじゃん?だから隊士たちの中ではあの二人がそういう関係なんじゃないかっていう話もあるみたいだよ。ほんっと、上手くバケてるよねぇ歌恋ちゃん。」
「確かに…隊士のみなさん、歌恋さんを完全に男性だと思っていますよね。」
「……まあ、バレそうになったら稽古でぶちのめして、『ここまでやれるんなら男子だな。っていうかこれで女子だったら俺っていったい…?』って思わせているだけだけど。」
「えっ…」
だいぶ怖いことを言っているけれど、歌恋さんならやりかねない…。
背中を、つぅっと冷たい汗が流れた気がした。
それを誤魔化すように、また一つお団子を口に運ぶ。
鼻をふわりと通る蜜の香ばしさに、何とも言えない幸福感を感じた。
「……そういえば、土方さんってかなりモテるって知ってる?」
「…へっ?」
不意に聞こえた総司さんの言葉に、そんな気持ちも吹っ飛んでそちらを見る。
総司さんはにこにことそれは楽しそうに話し始めた。
「前なんか両手に抱えるほどの恋文もらって、それ全部実家に送りつけたの!もう、ほんっとあの人面白いよねぇ。
…あ、でも真雪ちゃんも結構もらってるんだっけ?」
「…触れないでください…」
総司さんの笑顔に、脳裏をあのたくさんの文がよぎっていく。
最近は収まってきたものの、それでも毎日欠かさずに一つから五つはくるのです。
「………うん、頑張れ。
じゃあそろそろ帰ろっか。歌恋ちゃんたちも待ってるだろうし。」
「そうですね。」
立ち上がって伸びをした総司さんに合わせて、僕も立ち上がる。
すると、珠紀さんがたたっと駆け寄ってきた。
「お帰りになるのですね、ありがとうございました!」
「ん、こっちこそありがとう。」
「藤堂様もまた来てくださいね。」
「あっ、は、はい!」
ふにゃっ、と微笑まれて、僕はまた顔が赤くなるのを感じた。
笑顔が目に焼き付いて、ぼおっとなってしまう。
「ははっ、真雪ちゃん照れすぎ。
じゃ、また来るから。」
「はい!お待ちしております。」
そんな二人の会話も、どこか遠くでしている気がして。
「ほらもう真雪ちゃん行くよー!」
ズルズルと引きずられるようにしながら、僕はやっと屯所に帰ったのでした…。



い、一ヶ月も経ってる…!?
これからはもう少し早く更新できるように頑張ります。
<2017/03/12 09:44 水瀬 玲>消しゴム
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