「…え?」
心に、強い衝撃が来たような感覚。
人は驚きすぎると、ろくに反応もできないようだ。
「平助さんと、一さんが…?」
「平ちゃんと一君が離隊?」
「はい………。」
寂しさから首を落とすと、歌恋さんは少し考えるようなそぶりを見せた。
「……そういえばそんなの習いましたね…」
「へ?」
「あ、いやこちらの話です。」
何だろう?
歌恋さんはそんなに気にしてほしくないみたいなので、触れないでおく。
「…あれ、そういえば歌恋さん、また風邪ですか?」
「違いますよー。ちょっと立ちくらみで倒れそうになっただけで一日休んでろって布団に放り込まれたんです。」
「……土方さんに?」
「土方さんに。」
朝から何か聞こえてきた大声はそれだったのか…。
「大丈夫ですか?」
問うと、歌恋さんはふんわり笑った。
「大丈夫です。」
その笑顔に、綺麗な顔が余計際立つなあ…なんて場違いなことを考えてしまう。
ちょっと異国の血が入っているような澄んだ水色の目。今日の空みたいだ。
「…で、ですよ真雪ちゃん。」
「はい?」
その目が一瞬キラッと光った気が…。
歌恋さんはガバッと起き上がり、僕の方を向く。
「抜け出すお手伝いをさせてくれませんか?今日どうしてもお団子を補給しないと、甘味不足でそれこそ倒れちゃいます。」
「抜け出す、お手伝い…?」
聞き返す僕に、歌恋さんはニヤリと笑った。
抜け出す方法は歌恋さん曰く「企業秘密です!」だそうなので、ここでは記さないでおきます。
そういうわけで怒られる覚悟で屯所を抜け出した僕たちは、その後すぐに別行動となった。
理由は歌恋さん曰く「二人でいるとバレやすいですからね!」だそうだけど、そんなに変わらないような気がするんだよね…。
…歌恋さん曰くばっかりだ。
「…?」
ふと、前方に目をとめた。
金髪の、凄く威圧感を放っている人……。
知り合いではないけれど、嫌に目につく。
僕の視線を感じてか、その人はチラリとこちらを向いた。
少し目を見張ってから、こちらにゆっくりと歩いてくる。
赤い目に囚われたようで、僕は動けない。
「貴様……この時代の者ではないな。西洋の鬼の血も混ざっている……」
「……へ?」
地を這うような低い声。
言っていることは歌恋さん以上にわからなくて、僕は首をかしげた。
「知らぬのか?貴様、歌恋の血縁者ではないのか?」
「歌恋さんと?」
聞き返す。
確かに時代は違うけれど、歌恋さんが僕の…?
「それはないです!歌恋さんみたいな綺麗な方と僕が血縁者なんて…」
大声に街行く人が振り返っていることも気にせず、僕は言い返した。
男の人は少し目を見張って、その後フッと笑う。
「…その性格、間違いは無いようだな。
まあ良い、時が来るようならばその際に話そう。」
男の人はそのままゆっくりと人混みに紛れていった。
僕はぽかん、と口を開ける。
何だったんだろう……。
…………まあ良いか。
よくわからない人だから、人違いかもしれないし。
気を取り直してお団子でも食べようかな。
そう思って僕は珠紀さんのお店へと足を向けるのだった。
