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薄桜鬼ー雪光録ー
- 第十七話 おかえり -




「わぷっ!!!」
「……ん。」
少しぼうっとしながら歩いていたからか、前にいた人に気がつかなかった。
「す、すみません……」
言いながら顔をあげる。
……そのまま、硬直した。
「………………へっっ!?」
懐かしい姿。
柔らかな紫色の髪の毛。凛とした表情。静かに光る紺色の瞳。
「は、一さん……?」
「…真雪か。少し背が伸びたか?」
「そうですかね?あ、お久しぶりです。元気でしたかっていやいやいやいやいや!!!」
「…?」
本気で不思議そうな顔をする一さんの肩を、僕は思わず強く掴んだ。
「なんで一さんが居るんですか!?」
「……ああ、そのことか。」
対する一さんは特におかしいと思っていなかった、という風にこちらを見返す。
「嘘だった。」
「……ふぇ?」
「あちら側についた、というのが嘘だった。」
「……え?」
二回揃って聞き返してしまい、一さんに怪訝そうな顔をされた。
でも、こういう反応をしてしまうのは仕方がないんじゃないかな。
…そう思いません?
「つまり、一君は初めから向こう側についたわけではなく間者として御陵衛士に混ざっていた、という訳ですよね?」
「ひゃっ!!」
後ろから急に声が聞こえて飛び上がりそうになる。
「か、歌恋さん…」
言いながら振り返ると、歌恋さんは「驚かせてしまいましたか?」とクスクス笑った。
「…その通りだ。俺は間者として衛士になり、動向を探っていた。」
一さんは静かに言うと、僕の頭をそっと撫でる。
突然のことにびっくりして、僕はそのまま固まってしまった。
「……久しぶりだな。」
「……」
ぽかん。
歌恋さんは堪え切らない、と言う風に笑い出す。
「は、一君タイミングが不思議すぎますよ。あっはははは!!」
「そ、そうか…?」
一さんのきょとんとした顔に、歌恋さんはまた笑う。
何となくつられて、僕も笑ってしまった。
「おい斎藤!歌恋!ちょっとこっちに来い。」
「はーい!」
「承知しました。」
土方さんが副長室から顔を出し、二人はパタパタ歩いていく。
呼ばれていない僕は、ただ二人の背中に手を振った。
………急に、暇になっちゃった。
どうしようかな。
というか、たいみんぐって何だろう。

「…で、俺のところへ?」
「だって組長さんはみんな集まってるみたいで居ないんですもん。」
むくれてみせると、「組長は忙しいからな」と八十さんは笑った。
ここは一番組隊士部屋。他の隊士さんはみんなどこかに行っているようで、広々としている。
「っ!けほっ、こほっ…!」
「大丈夫か?」
不意に咳き込んだ僕の顔を、八十さんは不安げに覗き込んだ。
咳で上手く話せない僕は、手を振って「大丈夫です」と表す。
「少し、むせ、ちゃっただけで…」
しかし、八十さんは疑うように眉をひそめた。
「……少しむせる、というのは毎日なるものか?昨日もしていただろう。
…お前、風邪でも引いてるんじゃないか?」
「…………引いてませんよ。咳だってたまたま…なはずです。」
「なら良いんだがな。」
疑わしげな目線は変わらず、八十さんは僕の額に手をやる。
ひんやりとした大きな手が心地よくて、つい目を瞑った。
「………いまいちわからん。」
「いやわからないんですか。」
八十さんはいたずらっ子のように、目を細めて笑った。
…年上だけど、可愛らしい人だなあ。
真面目な顔も笑った顔もみんな綺麗。
「いや、お前も整った顔をしているからな。」
「ふえっ…?」
こ、心を読まれた……!?
なんて思っていると、八十さんは「顔に書いてある」とほおを突いた。
思わず顔に手をやった僕を見てか、また八十さんの笑い声。
「お前はわかりやすいな。」
ぽんぽんと頭を撫でられ、カッと顔が熱くなるのを感じた。
「は、恥ずかしいです…!」
「真雪はまだ子供だろ?年上に甘えるのは当たり前ではないのか。」
「流石に撫でられるのは慣れてませんよ!」
………慣れてない、かな?
…あれ、散々お母様に頭を撫でられていた気もしてきた…………。
………ま、まあ良いや。
八十さんはさっきとは違う楽しげな瞳で、「本当か?」なんて疑う素振りを見せてくる。
「ほ、本当ですもん!」
「じゃあ、これから慣れていくか?」
「そっ、そうじゃありません!!!!」
……僕が叫んだ数秒後、「うるせえ!!!斎藤の声が聞こえねえじゃねえか!!!」と土方さんの声がこちらに響いてきた。そして、「き、聞こえませんでしたか…!?」という一さんの声と、歌恋さんと総司さんの笑い声が聞こえてくる。
僕たちは驚いて肩をあげた後、目を見合わせて小さく笑った。

あれ八十さんお幾つ………?
歌恋が本当に動かしやすいというか何というか、性格上どこにでもいそうなので重宝してます(笑)
<2017/05/16 07:04 水瀬 玲>消しゴム
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