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薄桜鬼ー雪光録ー
- 第二十四話 戦い -




…嫌な空気だ。当たり前だけど。
時たまお互いにチラリと視線を合わしたりはするけれど、会話するには至っていない。口を開いては閉じるの繰り返し。
自分が悪いことはわかっているし、謝らなくてはいけないこともわかっている。
でも、何だかわからないものが僕を止めるんだ。
謝らなくちゃ、謝らなくちゃ…!!
そう思っても、ただ時間は過ぎていくだけ。



はっ。
ふと目が覚めた。
体のあちこちが痛い……座ったまま寝てしまったのか、変な体勢になっていたようだ。
視線をあげると、これまた不思議な体勢で眠る総司さんの姿が目に入る。
僕はそれを少しの間見つめてから、そっと立ち上がった。
少し、頭を冷やそうと思う。
総司さんが起きないように障子を開いて、廊下に出る。
これまた一さんが起きないように部屋で着替えて、総司さんの部屋に『昼には戻ります』と書いた紙を置いて街に向かった。


やはり、夜の街は昼間より静か。
ひんやりどころかとても寒くて、上着すら持ってこなかったことを後悔する。
「……」
特に、やることもやりたいこともないんだよなあ。
と、急に咳き込んでしまう。
喀血まではいかなかったけれど、それはいつも以上に長く続いて。
ああ、僕はもう健康体ではないのだなあ…。
なんて、改めて思ってしまった。
やることがなくても、立ち止まっていたら寒くて仕方がない。
咳が治ってから、僕は少しずつ歩き出す。

気がついたらもう屯所からはもう結構離れていて、ここはどこだろうかと辺りを見回してみた。
…あ。
珠紀さんの甘味処だ。最近行ってなかったからか、妙に懐かしい。
今はもちろん開いていないけれど、ほんのり甘い香りがする。
「……」
また行きたいな。でも、行ったら伝染しちゃうかな。
今度総司さんや一さんに相談してみようかな。
ああ、結局総司さんのことを考えている。
そう思って、また一歩歩き出したときだった。
「ーーっ!!」
すごい、殺気…!
刀に手をかけて周りを見ても、どこにも人の気配はなくて。
少し考えたあと、バッと上を向いた。
あそこ……丘の上!!
何があったんだろう。
そう考えるよりも先に、足は動いていた。



「な、何これ…」
急いで向かった丘の上。そこは血の匂いにあふれていて。
白髪赤目の人と、剃髪の人…そして、千鶴ちゃん、歌恋さん、平助さん…総司さんまでいる……いつの間に起きたのだろう。
この前の、金髪赤目の不思議な人もいる。他にも、見たことのない人たちまで。
「貴様は鬼の道を外れた。紛い物とともに……死ね」
金髪の人が血の底を這うような声を出す。
人を射抜くような鋭い瞳は、まっすぐに剃髪の人に向けられていた。
「前々からその態度が気に入らなかったのだ。
これだけの羅刹を相手に出来るかな?
よし、かかれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
あまりの迫力に、ヒュッと息を飲んでしまう。
歌恋さん、総司さん、平助さんもさっと抜刀していて。
どうやら剃髪の人と白髪の人たちは敵のようだ。
これは、僕も行ったほうが良いのかもしれない。
人数の差もあって、しかも白髪の人はそう簡単には死ななくて……明らかに形成不利。
白髪の人は、妖か何かなのかな。心の臓を刺したとき、首を落とした時は倒れてるけれど。
…よし。
僕も加勢するしかない。
小さな音で抜刀すると、気配を消して飛び出した。
「後ろにも居ますからね?」
完全に不意打ちだったからか、目の前の白髪の人は抵抗する間も無く倒れる。
歌恋さんたちはその音に振り返って、目を見開いた。
「は!?真雪ちゃん…!?!?」
「真雪ちゃんっ!?どうしよう…」
「なんでお前がここに居んだよ!!!」
な、なんか責められた。
でも、金髪の人は面白そうに目を細めたように見える。
「何がなんだかわかりませんが、とりあえずそれは置いときましょう?
先ずはーー」
言いながら、相手の刀を振り払う。
「こっちが先ですよね」
心の臓に突き刺した際の血が、月明かりに紅く飛び散った。



「ぐ…」
微熱のせいか、視界が揺らぐ。
あれからどれくらい斬って斬られたのだろう。
少なくとも、ほおと左腕の上の方は間違いない。
あとの痛みは擦りむいたのか斬られたのかよくわからないんです……よく転びまして。
少し離れたところでは何やら剃髪の人と千鶴ちゃんたちが言い合ったりしているようだけど、今の僕にはそんなに気にする余裕がない。
あれからまた白髪の人は増えたようだ。
流石に少しキツいかもしれない…。
更に不利な状況で、みんな疲労は目に見えてきている。
金髪の人の忌々しそうな舌打ちが聞こえてきた。
そんなとき。
「おい!大丈夫か!!」
「土方さんっ…!」
たくさんの足音とともに、新選組の皆さんの姿が現れた。
「真雪!!…てめぇ、どれだけ心配したと…!」
「書き置きのみ置いていくのはやめろ」
「す、すみません…」
ま、また責められたんですが…。
「ってかよお前ら。なんで俺たちより先にここに居るんだ?」
「真雪ちゃんがどこか行っちゃった、こんな時間だから不安って総司君が叩き起こしてきたんですよ。で、探そうとしたらすごい殺気がしたのでそっちに向かったんです」
うわ、すごい迷惑かけたみたい。
申し訳なくなって、僕はつい俯く。
「まあとりあえず、こっちを何とかしねえ?」
「同感だ」
平助さんと一さんの言葉に、皆さんも前を向き直った。
僕も刀を彩る血を払う。
人数は先ほどより多少増えた。それだけでも流れは変わって。
敵も半分ほどに減った。
「ーーやはり!あなたは月光族の月色歌恋さん!」
「……え、何ですか?」
急に剃髪の人が嬉しそうな声を出して、僕も一瞬動きを止めてしまった。
慌てて向こうからの突きを避けながら歌恋さんの方を見るけれど、身に覚えがないみたい。怪訝そうな顔をしている。
「大きく成長しましたね」
「は?知り合いでしたか?」
「…おや、もしや記憶にない?
となると、あの素晴らしい姿も記憶にないのですかね?」
「素晴らしい…?」
歌恋さんが不思議そうに返すと、剃髪の人は満足げに頷いた。




「ええ…あなたの一族が滅びたあの時の姿ですよ」






浅葱色の華の方でもお知らせさせていただいたのですが、この度serenaは『水瀬玲(みなせ れい)』に改名することにしました。
突然でご迷惑をおかけするとは思いますが、よろしくお願いします。
<2017/07/31 19:50 水瀬 玲>消しゴム
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