「えええええええええ!?!?」
「お前は何回叫んだら気が済むんだゴラァァァァ!!!」
「どっちもうるさいです。」
あの後、屯所に戻った僕はもう何度めかもわからない叫び声をあげた。
つ、つつ月色さんがおおおお女の人……!?
た、確かに女の子みたいって思ったけど…。
「ほ、本当に女の人なんですか…?」
「はい!そうだ、もう一人居るんですよ。」
「そんなあっさりバラして良いもんなのか?」
「その時はその時です♪」
月色さんのニッコリ笑ったその笑顔を見て、僕は絶対に何があっても他の人にバラさないようにしようと心に誓った。
「は、はじめまして。雪村千鶴です。」
「こ、こちらこそ…。藤堂真雪です。」
「「よろしくお願いします…。」」
二人で言葉が重なってしまい、月色さんと土方さんは苦笑いをする。
「お見合いみたいですねぇ。」
「やめろ歌恋。俺たちがこいつらの親みてぇだろうが。」
「失礼ですね。土方さんは兎も角、私はそこまで年取ってませんよ。」
「あ?」
不意に感じられた殺気に僕は固まった。
よく見ると雪村さんも固まっている。
「あ〜あ、土方さんの殺気で固まっちゃいましたよ?千鶴ちゃんまで固まっちゃうって、相当じゃないですか。」
「うっせぇ!………まあ、悪かったよ。」
土方さんはどこか気まずそうに頬を掻く。
……怖いけど、悪い人じゃない、かな?
「……あの、藤堂さんは結局………」
雪村さんがおずおずと切り出すと、土方さんはジロリとこちらを見た。
「あ、雪ちゃんならこちらで住みたいって言ってましたよ。帰る家が無いみたいで……」
「帰る家が無い、だあ?」
土方さんは大きな声をあげ、月色さんと僕を交互に見る。
なんだか生きた心地がしなくて、僕はつい縮こまった。
「……その、時渡りの様なものにあってしまいまして……………。
本当は僕、明治に生まれたんです。あ…その、明治っていうのは江戸の後の時代です。
いまいち記憶は無いのですが………両親に家の秘宝だとかいう瑠璃の石を渡されて…それでなんらかの理由で飛ばされてしまったのかな……って……おも……い……ます……………」
だんだん消え入りそうな声になってしまったのは仕方が無いと思う。
土方さんは話を聞くうちにどんどん目つきを鋭くしてきたのだ。
「……証拠はあんのか?」
「…………えっと、江戸時代の俳諧をお母様が教えてくれました。」
「…その、俳諧って?まさか土方さんのとかですかね?」
「んなわけねぇだろ!……言ってみろ。」
土方さんは月色さんに吠えるように怒鳴った後、僕の方を再び向いてきた。
僕はすぅっと息を吸う。
「梅の花、一輪咲いても、梅は梅。
春の草、五色までは、覚えけり。
…大切な、雪は溶けきり、松の庭…。
………おもしろ…き……や、夜着の並びや、け、さの雪…………」
僕はまたまた声を小さくした。
土方さんの後ろに、鬼が見える……!
「……なんで知ってんだてめぇぇぇ!!」
土方さんの怒鳴り声と、月色さんの笑い声が屯所中に響き渡っていった…………。
僕はまた、広間に座っている。
結局、ここでお世話になるので改めて幹部の方に挨拶する事になったのだ。
「マジ!?真雪君がここに住むの!?やったぁぁぁ!!よろしくな!
隊士として扱うのか!?何番組所属になるんだ?なぁ土方さん!八番組にしてくれる!?」
お世話になる趣旨を伝えた途端、平助さんに尻尾が生えたような気がした。
ぶんぶんとそれを振っているような笑顔で土方さんに問いかけて、うるせえ!と痛そうな拳をもらっている。
「……三番組はよしてくださいよ。」
「言われなくてもしねぇよ馬鹿。」
「な、何故……」
平助さんと同じような雰囲気の永倉さん、原田さん(月色さんに名前を教えてもらいました)とは違い、沖田さんと土方さんはとても冷静。
…と、いうのかな……。
「…よろしくお願いします。」
「ああ、よろしくな!」
平助さんに笑いかけると、平助さんはニッと笑ってくれた。
「んで?どうするんです?私は八番組に来て欲しいんですが…」
「…そうだな、一番組でどうだ。」
「……は?」
土方さんの一言に、沖田さんが冷え切った声を出す。
その余りの怖さに、僕は震え上がった。
「……何でです?別に他の組でも良いじゃないですか。」
「てめぇこの前にわざわざ俺の部屋に来て愚痴をこぼしてたじゃねぇか。隊士たちが稽古で怪我を負っちまって人手が足りねぇって。」
「でも、こんな子が僕の組に入っても平気なんですか?そもそも試験とかは…」
「人手が足りねぇんじゃねぇのか?」
「……まあそうですけど。」
何か沖田さんと土方さんが言い合ってるけど、なんか所々に恐ろしい言葉が入っているような…。
僕はおどおどと目を向ける。
「……ねぇ、君。剣術は得意?」
「一応、得意な方かと…」
明治に居た頃は一度も負けたことはないけれど、この人たちは凄い強そう……。
ちょっと、語尾が小さくなってしまったのは仕方ないと思う。
「………その言葉、嘘だったら斬るからね。」
え………………。
「おい総司、いい加減にしろ!」
土方さんに怒鳴られ、沖田さんは肩をすくめた。
「冗談ですよ、土方さん。」
土方さんの顔には青筋が浮かんでいるけども沖田さんはお構いなし。
局長の近藤さんに向き直ると、笑顔で
「じゃあ、一番組で良いですよ。」
と言ってくれた。
…言ってくれた?
でも、僕に居場所が出来たみたいで、少し嬉しい……かも。
「うむ!では、今日から藤堂君は一番組隊士だ!」
近藤さんが、そう高らかに宣言する。
局長さんのためか、誰も反論しなかった。
……この先、どうなるか不安。だけど…少し、楽しみ。
僕はそう思って、また小さく笑った。
…………何故か、本当に僕が男かを議題とした議論が始まった。
