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The last of the world
- プロローグ 『アカウント』 -

「新規アカウントを作成します。それでは、ユーザーの種族、職業を選択してください」

人工的で無機質なその声から紡がれる言葉は、俺をこの世界(ゲーム)に引き込むには充分すぎるものだった。

「種族か……ここはシンプルに【ヒューマン・人間】でいこうかな……」

ホログラムの画面に向かって独り言を呟きながら、種族を選択するべく指を伸ばす。
画面に触れた指先には、まだ見ぬ世界への期待と憧れが震えとなって滲み出ていた。

「次は、職業選択か……」

【剣士】に【魔導士】など、メジャーなものから、【踊り子】や【旅芸人】といった、そうでないものまで、画面には世界観の感じる職業がざっと見ただけでもその数は軽く五十種以上にも渡っていた。

多種多様な職業が並ぶリストには、職業の名前、その職業の大まかな説明、該当する性別が表示されていた。

「女性限定の職業なんかもあるのか。面白いな」

殆どの職業は男女共に該当するが、中には【メイド】や【踊り子】といった、女性限定の職業も存在した。

「って、【メイド】ってなんだよ!?【踊り子】ならまだ分かるけど、【メイド】って……俺の想像していたファンタジーな世界観が……」

崩れ始める世界観に、失望を隠しきれず溜息を漏らす。さらには女性限定の職業で【巫女】なんてものまであった。

「どこに行ったんだ、俺のファンタジーな世界観……これは、もう、仕方が無いと割り切るしかないのか……」

深く溜息をつくと、【メイド】や【巫女】といった、これらの職業はゲームに必要なヒロイン要素の一つなんだと、少し無理のある割り切り方で納得の方向へと持っていく。

「さてさて、気を取り直して職業選択に戻るとしよう」

半端強引に自身の想像していた世界観を崩してしまう職業の存在を脳内の片隅に置き去りにして気を取り直す。
再び職業が並ぶリストに目を通しながら、探していた。職業選択と聞いた時から、心に決まっていたものをだ。

「見つけた……」

指先に触れていたリストには、【魔法剣士】と記されていた。説明を読まずとも、字面で大体の想像はつくが、魔法を扱う剣士のことだ。

「これだけの種類があれば絶対にあると思ってたぜ……」

せっかく魔法が使える世界設定なのに、魔法を使わないのは勿体ない。かと言って、男なら誰しも一度は剣を派手に振り回して敵をギッタギタに倒したいとも思う。そこで頭に浮かんだのが【魔法剣士】だ。剣を扱いながら魔法も扱う。俺にとって、これ以上にない完璧な職業だった。

「【魔法剣士】で決定と……」

「種族、職業が決定しました。種族【ヒューマン・人間】、職業【魔法剣士】で宜しいですか?」

リストから【魔法剣士】を選択すると、あの無機質な音声から、最終確認を取られる。ホログラムの画面にはyes・noのアイコンが表示されていた。

俺は、yesのアイコンに触れて決定の意思を示す。

「それでは最後に、ユーザー名を入力してください」

無機質な音声と共に、画面にはアルファベットの並ぶキーボードが表示された。
学校の授業でもキーボードを使うことは多々ある。慣れた手つきで、画面内のキーボードから文字を入力していく。

「ユーザー名《Yozora》で決定します。宜しいですか?」

再びyes・noのアイコンが表示される。

「ここから、始まるんだ……」

俺は迷わずyesのアイコンに触れた。この時の、感動、喜び、期待と憧れはこの先一生忘れることはないだろう。

「新規アカウントの作成が完了しました。ユーザー名《Yozora》さん。この世界で大きな活躍を見せてくれることを期待します」

ホログラムの画面に表示されたWelcome to The last of the world!!の文字が俺を世界(ゲーム)へと誘った。

<2016/12/01 17:34 K斗>消しゴム
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