何でこの世なんて存在するんだろう。何で必要なんだろう。誰が作ったんだろう。
何でこの世の全員に未来が用意されてるわけじゃないのに、期待なんてするんだろう。
私には、わからないことだらけだった。
学校では、無駄な仲間意識で友達ごっこしてるやつ。心底気持ち悪いと思った。
そんなひねくれものの私の、人生で2度目の恋のお話。
まだ桜の木には花が残っていて、慣れない制服に袖を通す。見慣れない教室、見慣れない先生の中で、私は書記委員に立候補した。
中1の初めの委員会、それがあいつとの出会いだった。
物静かそうで、人当たりが良さそうな男の子。
「君も書記なんだ?」
少し勇気を出して聞いてみた。
あぁあのとき、声なんてかけなきゃ良かったのに。
「あ、うん。若干無理矢理ね。」
顔を赤らめて言ったあの瞬間は忘れられない。
少し人見知りして、会釈した君の第一印象は良かった。
月に1度の委員会は私にとってすごく大切になった。
正直、あいつ(皐月)のことは一番仲の良い美明(みはる)から聞いていた。小6のときに、皐月と美明は仲が良かった。
委員会のときに、皐月のことをたくさん知れた。
彼は、サッカー部で小3のときから紅月琴華(こうづきことか)って言う子が好きならしい。その子とは両想いだった。どうやら、相手はもう皐月のことを好きじゃないそうだ。
好かれていないのをわかっていて、今でも好きでいるらしい。一途なんだなって思うと、顔がほころんだ。
「まぁここまでが私が知ってることなんだけどね。美明なんか知らない?」
「私、遊んだことはあるけど興味ないしよく知らない。」
「そ、そっか。」
もっと知りたいな、皐月のこと。まだいっぱいあるんだろうな、知らないこと。琴華って子は皐月のことたくさん知ってるのかな。私の知らないようなことも。
私はLINEもTwitterもやってないから、流行には疎いし連絡をとるのもメールか電話しか出来なかった。だから、皐月のこと知る手段が何もなかった。LINEやってれば、交換するのにな。どんな感じになるのかな?皐月はLINEでも優しくしてくれるのかな?皐月はどんな顔するのかな?
「なぁ友島(ともじま)ぁ」
「は、はい!?」
こんな妄想してる今は、委員会なのでした…。
「これっていつやんの?なんなのこれ?」
「あ、これは…」
私のプリントを覗きこんだ皐月は、私との顔の距離が一気に近づいた。
ヤバイヤバイ!近いって!!
細くてシュッとした目がかっこいいし、声が落ち着いてて、クラスのバカ男子みたいに大騒ぎもしない。
「おーなるほどね。サンキュ」
「う、うん。」
照れている私に全く気付かず、皐月は遠ざかっていった。
立ち去って行く皐月の後ろ姿が、少し寂しかった。
「かっこよかったんだよ~!すっごく!」
委員会の帰り道、今日は部活がお休みだから美明が待ってくれてたから一緒に帰った。
委員会での話をする私は、完全に乙女でテンションが上がりまくりだった。
「羽南(はな)、小4のときの初恋の人は?」
そんな私を気にせず、美明は聞いてきた。
「え、うん、好きだけど。でも何年も会ってないからな…。」
「皐月のことは?」
「な、なんだろう…考えたこともないけど。」
「気付いてないんだ。私、羽南は皐月のこと好きなんだと思うけど。」
「え、えぇ!?そ、そう思う!?」
「うん。」
美明が少し笑いながら言った。私にはすごくバカにしているように見えた…。日が傾いて、夜を迎える。隣には、大好きな親友。そんないつもの日常が、少し変わりつつあった。
数日後の話。
長引いた授業の後、私は時間割りを確認した。
「うわ、次の時間美術じゃん。」
「ほんとだ…美術室ってどこだっけ?」
美明とそんな話をしながら、美術室に向おうとしていた。
教室を出ると、ちょうど皐月がいた。というより、数人の男子がたわむれていた。その中で、皐月しか見つけられなかった。皐月ということがわかると、顔が熱くなったのがわかった。皐月と目が合うと、ニコッと笑って手を振ってくれた。こんなの初めて。男の子に手を振られるだなんて。その目はすごく優しくて、すごく落ち着く。でも、それと同時に「あぁこの人は今まで、1人の人のことしか考えたことないんだろうな。」って思ったら、少し寂しかった。そして、この人の彼女は、大切にされるんだろうなって思った。そんなことを思いながら、私は手を振り返した。でも、この日だった。「私はやっぱり皐月が好きなんだ。」ってわかってしまった。
その日はずっと考えてた。私には小4のときにした、初恋がある。その人は今どこにいるのかもわからない。生きているのかも本当はよくわからない。そんな人に、今まだ恋をしている意味ってあるのかな。新しい恋をしてみても良いのかな。私は、まだその人に恋をしてるのかな。皐月に、新しい恋をしてみても良いのかな。
もう木には緑が見られず、茶色の葉へと変わっていく。
早朝の空気はひやりと冷たく、清々しい。もう12月です。
「今日も寒いね~」隣で鼻をすする美明。「寒いね~」と私。「泳ぎたいな~どうせ今日もトレーニングだね。」
美明は苦笑いしながら言った。
私達水泳部は、冬はトレーニング、泳げるのは夏だけだ。
しかも、1年生ということがあって夏でも毎日泳げるわけじゃない。他の部が色々な練習をしている間、私達は体力作りだ。
「あ、羽南!皐月居るよ!」美明が声を高くして言った。
皐月が好きだと、美明にだけに明かした。
美明は嬉しそうに、そっかそっか!!って言ってくれた。
だから少し頑張ってみようかな…。
「声大きいよ美明!い、居るのとかわかってるし。」
照れる私をよそに、美明はニパァって笑った。
少し恥ずかしいけど、前に踏み出せた気がした、そんな人生の2度目の恋の始まりだった。
「そうそう!美明!」
「どうしたの?」
「私!LINE始めるんだぁ!」
「やっとか羽南!これで皐月にももっと近づけるかもね。」
これで、もっともっと皐月のこと知れるのかな。
知れると良いな…。
今でも忘れない。12月8日。
7日にLINEを始めて、設定とかもバッチリだ。
皐月と同じサッカー部の子に明日、皐月のLINEをもらおうと思っていた。いきなりLINE送ったら、皐月びっくりしちゃうかな?そんなことさえも、楽しみだった。
明くる8日。「まひろ」って名前のLINEを貰った。
早速、「友島です!昨日LINE始めたばっかり(>_<)よろしくね~!」って送って、返信が来ないか何回も携帯を見た。
5分くらい経った頃、「おぉ!友島か!皐月でーす。よろよろ。」って送られてきた。
あ、うわぁ、皐月はLINEでこんな感じなんだって思った。
あの皐月とLINE出来てるんだって思うと、胸が暖かかった。な、何話そう…。
「あ、そういえば友島ってさ。」
おぉ、話題出してくれた…。
「ん?」
な、な、何を聞かれるんだろう…
「好きな人いるって言ってたよな?」
「え!?言ったっけ!?」
「言ってた言ってた(笑)」
「う、嘘ぉ…」
一気に顔が熱くなって、ほてってくる。
こ、これは早くも告白のチャンス!?
で、でもさすがに早すぎるかな…
「ねぇ誰なの?」
「もう気が付いてるよね?」
流れが良すぎる。もう言っちゃいそう…。
「全然わかんないんだけど。」
「皐月だよ。私は皐月が好き。」
もうどうなってもいいや。琴華って子が好きなのは知ってる。気持ちだけ…で、でももしかしたら…。
付き合えることも、あるのかな?
「え、本当に?全然気づかなかったんだけど。」
「本当だよ。皐月が好き。皐月のこともっと知りたい。琴華って子が好きなのは知ってるよ。それでも良いから、私が絶対皐月の側にいる。寂しい思いなんてさせない。だから、私と付き合って下さい。」
送信して、ハッと気が付く。私何言ってんの!?
で、でも琴華ちゃんが好きでも構わない。
きっとこれから楽しくさせてみせる。この私が。
「うん、良いよ、付き合おっか。」
「え、ほんと!?やった!!」
「うん、よろしくね。」
「うん!!!」
今思えば、ちょっと無理矢理過ぎる気がするし全然皐月のこと考えてなかったな…。
でも、私は12月8日。この日に人生で始めて、彼氏が出来ました。ちょっと胸が跳ねるような感覚。これが、私の中1の冬の始まりだった。
「でね、皐月とお付き合いすることになりました…(照)」
「本当に!?すごいすごい!!皐月はもう琴華は良いのかな?」
美明は少し不安げだった。
「わからない。でも、このチャンス試してみたいんだ。」
美明は少し驚いた顔をしたが、すぐに
「そっか、応援するよ。」と優しい目で言った。
でも、紅月琴華ってどんな子なんだろう…。
「ねぇ美明。琴華ってどんな子なの?」
「あれ、羽南知らないっけ?すごく美人で可愛い子だよ。少し不思議な雰囲気あるけど。」
「そ、そうなんだ。」
皐月もやっぱり可愛い子が好きだよね…。
私は、どちらかと言えば男っぽくて、お世辞でも可愛いとは言えない。昔から女の子らしさがなくて、モテたことなんて1度もない。本当は、小さいときはフリフリのスカートとか履いてみたかった。今でも、可愛いお洋服が大好きだし着てみたいって思う。でも、絶対似合わないんだろなって。髪もストレートのショートだし。琴華ちゃんみたいな可愛い女の子とは、あまりにも対照的だった。
「美明、私琴華ちゃんに会ってみたい。いや、でもいきなりは怪しいから見るだけでも!美明案内して!お願い!」
「羽南がそんなに言うんなら断れないよ(笑)良いよ、行こっか。」
「ありがとう!!」
美明に案内してもらって、高鳴る胸を抑え、琴華ちゃんのもとへ向かった。
彼女は、3組の教室に居た。
ちょこんと座って本を読んでる。ブックカバーをしてあって、何を読んでるのかはわからないけど。
「め、めちゃめちゃ美人…」本当にびっくりした。この一言しか出ない。
「でしょ?」少し美明は自慢気だ。
琴華ちゃんは、背が高くて、スタイルが良くて、おまけにすごく美人。大人しくて、とても女の子らしい。
「さ、皐月はこんな子が好きなんだ…」
皐月のことを知れた気がしたけど、すこし寂しかった。
「そうだよ。」
笑いながら言う美明を少しばかり睨んだ。
とても私とは正反対すぎて、あっけにとられていた。
バンッ!いきなり肩にぶつかられた。
どうやら、あっちが走って教室に入っていくようだった。
「いったぁ…邪魔なんだけど?」
「あ、ご、ごめんなさい…」
謝る美明をよそに、私はカチンときていた。
「あなたが少し避ければ良くない?それに、走ってるから悪いのよ。」
私は真っ直ぐ彼女の目を見て言った。
「ふぅん。言うじゃない。私が悪かったですよーだ。」
その子は、むすくれた様子で教室に入っていった。
「あの子、バスケ部の谷崎明日奈(たにざきあすな)。ほんっとに生意気だよね。」
そういって美明は口をとがらせた。本当にあの子は何者なんだろ。
とりあえずその日は、琴華ちゃんの姿を目に焼き付けて帰った。
午後6時過ぎ。部活から帰宅。皐月とのLINEタイムだ。
「ただいまー。」
「おかえり。」
「今日塾なんだよね。」
「そんなんだ、頑張れ。」
「うん。」
やっぱりどこか皐月はよそよそしくて、私に興味がないように見えた。
「そういえば、お互いのことあんまり知らないよね。」
「そうだね。」
「自己紹介!してみよ!」
私の提案に少し驚いたのか、返信には間があった。
「いいよ。」
「じゃあ私から!友島羽南、12歳。1月30日生まれのA型。趣味は音楽を聞くことで、好きなスポーツは水泳とバレーボール。バレーは正直、見る専だけどね。」
「そうなんだ、スポーツ好きなんだね。」
「うん!大好き!」
「まぁ俺は嫌いではないかな。」
「そうなんだ!じゃあ次は皐月ね!」
「皐月真弘、12歳。1月3日生まれのO型。趣味はアニメ見ることかな。好きなっていうか、やってるスポーツはサッカー。」
「お正月だ!」
「そうそう、俺の誕生日の特番番組ばっかり(笑)」
「そうなんだ~」
なんでだろう、部屋でLINEしてるはずなのに、そんなに寒いわけじゃないのにすごく足が震えてる。皐月とLINEしてると、ずっとこんな感じなんだ。私は何を、恐れてるんだろう。
時は経って、12月15日。私達が付き合って、1週間が経った頃。
あれからさらに少し冷え込むようになってきた。
付き合うってこんなもんなのかな?
すごく時が経つのが遅い気がする。え、まだ1週間?って感じ。
告白したのが1週間前だなんて思えない。もっとたくさんの時間を過ごした気がする。
私は確かに皐月のことが好きなはずなのに。
付き合えて嬉しいはずなのに。毎日LINE出来てて、充実してるはずなのに。何がこんなにも私の心を震わせるのかなぁ…ふと、独り言をもらす12月の昼頃。その独り言は、雪と一緒に消えていった。
何でこの世の全員に未来が用意されてるわけじゃないのに、期待なんてするんだろう。
私には、わからないことだらけだった。
学校では、無駄な仲間意識で友達ごっこしてるやつ。心底気持ち悪いと思った。
そんなひねくれものの私の、人生で2度目の恋のお話。
まだ桜の木には花が残っていて、慣れない制服に袖を通す。見慣れない教室、見慣れない先生の中で、私は書記委員に立候補した。
中1の初めの委員会、それがあいつとの出会いだった。
物静かそうで、人当たりが良さそうな男の子。
「君も書記なんだ?」
少し勇気を出して聞いてみた。
あぁあのとき、声なんてかけなきゃ良かったのに。
「あ、うん。若干無理矢理ね。」
顔を赤らめて言ったあの瞬間は忘れられない。
少し人見知りして、会釈した君の第一印象は良かった。
月に1度の委員会は私にとってすごく大切になった。
正直、あいつ(皐月)のことは一番仲の良い美明(みはる)から聞いていた。小6のときに、皐月と美明は仲が良かった。
委員会のときに、皐月のことをたくさん知れた。
彼は、サッカー部で小3のときから紅月琴華(こうづきことか)って言う子が好きならしい。その子とは両想いだった。どうやら、相手はもう皐月のことを好きじゃないそうだ。
好かれていないのをわかっていて、今でも好きでいるらしい。一途なんだなって思うと、顔がほころんだ。
「まぁここまでが私が知ってることなんだけどね。美明なんか知らない?」
「私、遊んだことはあるけど興味ないしよく知らない。」
「そ、そっか。」
もっと知りたいな、皐月のこと。まだいっぱいあるんだろうな、知らないこと。琴華って子は皐月のことたくさん知ってるのかな。私の知らないようなことも。
私はLINEもTwitterもやってないから、流行には疎いし連絡をとるのもメールか電話しか出来なかった。だから、皐月のこと知る手段が何もなかった。LINEやってれば、交換するのにな。どんな感じになるのかな?皐月はLINEでも優しくしてくれるのかな?皐月はどんな顔するのかな?
「なぁ友島(ともじま)ぁ」
「は、はい!?」
こんな妄想してる今は、委員会なのでした…。
「これっていつやんの?なんなのこれ?」
「あ、これは…」
私のプリントを覗きこんだ皐月は、私との顔の距離が一気に近づいた。
ヤバイヤバイ!近いって!!
細くてシュッとした目がかっこいいし、声が落ち着いてて、クラスのバカ男子みたいに大騒ぎもしない。
「おーなるほどね。サンキュ」
「う、うん。」
照れている私に全く気付かず、皐月は遠ざかっていった。
立ち去って行く皐月の後ろ姿が、少し寂しかった。
「かっこよかったんだよ~!すっごく!」
委員会の帰り道、今日は部活がお休みだから美明が待ってくれてたから一緒に帰った。
委員会での話をする私は、完全に乙女でテンションが上がりまくりだった。
「羽南(はな)、小4のときの初恋の人は?」
そんな私を気にせず、美明は聞いてきた。
「え、うん、好きだけど。でも何年も会ってないからな…。」
「皐月のことは?」
「な、なんだろう…考えたこともないけど。」
「気付いてないんだ。私、羽南は皐月のこと好きなんだと思うけど。」
「え、えぇ!?そ、そう思う!?」
「うん。」
美明が少し笑いながら言った。私にはすごくバカにしているように見えた…。日が傾いて、夜を迎える。隣には、大好きな親友。そんないつもの日常が、少し変わりつつあった。
数日後の話。
長引いた授業の後、私は時間割りを確認した。
「うわ、次の時間美術じゃん。」
「ほんとだ…美術室ってどこだっけ?」
美明とそんな話をしながら、美術室に向おうとしていた。
教室を出ると、ちょうど皐月がいた。というより、数人の男子がたわむれていた。その中で、皐月しか見つけられなかった。皐月ということがわかると、顔が熱くなったのがわかった。皐月と目が合うと、ニコッと笑って手を振ってくれた。こんなの初めて。男の子に手を振られるだなんて。その目はすごく優しくて、すごく落ち着く。でも、それと同時に「あぁこの人は今まで、1人の人のことしか考えたことないんだろうな。」って思ったら、少し寂しかった。そして、この人の彼女は、大切にされるんだろうなって思った。そんなことを思いながら、私は手を振り返した。でも、この日だった。「私はやっぱり皐月が好きなんだ。」ってわかってしまった。
その日はずっと考えてた。私には小4のときにした、初恋がある。その人は今どこにいるのかもわからない。生きているのかも本当はよくわからない。そんな人に、今まだ恋をしている意味ってあるのかな。新しい恋をしてみても良いのかな。私は、まだその人に恋をしてるのかな。皐月に、新しい恋をしてみても良いのかな。
もう木には緑が見られず、茶色の葉へと変わっていく。
早朝の空気はひやりと冷たく、清々しい。もう12月です。
「今日も寒いね~」隣で鼻をすする美明。「寒いね~」と私。「泳ぎたいな~どうせ今日もトレーニングだね。」
美明は苦笑いしながら言った。
私達水泳部は、冬はトレーニング、泳げるのは夏だけだ。
しかも、1年生ということがあって夏でも毎日泳げるわけじゃない。他の部が色々な練習をしている間、私達は体力作りだ。
「あ、羽南!皐月居るよ!」美明が声を高くして言った。
皐月が好きだと、美明にだけに明かした。
美明は嬉しそうに、そっかそっか!!って言ってくれた。
だから少し頑張ってみようかな…。
「声大きいよ美明!い、居るのとかわかってるし。」
照れる私をよそに、美明はニパァって笑った。
少し恥ずかしいけど、前に踏み出せた気がした、そんな人生の2度目の恋の始まりだった。
「そうそう!美明!」
「どうしたの?」
「私!LINE始めるんだぁ!」
「やっとか羽南!これで皐月にももっと近づけるかもね。」
これで、もっともっと皐月のこと知れるのかな。
知れると良いな…。
今でも忘れない。12月8日。
7日にLINEを始めて、設定とかもバッチリだ。
皐月と同じサッカー部の子に明日、皐月のLINEをもらおうと思っていた。いきなりLINE送ったら、皐月びっくりしちゃうかな?そんなことさえも、楽しみだった。
明くる8日。「まひろ」って名前のLINEを貰った。
早速、「友島です!昨日LINE始めたばっかり(>_<)よろしくね~!」って送って、返信が来ないか何回も携帯を見た。
5分くらい経った頃、「おぉ!友島か!皐月でーす。よろよろ。」って送られてきた。
あ、うわぁ、皐月はLINEでこんな感じなんだって思った。
あの皐月とLINE出来てるんだって思うと、胸が暖かかった。な、何話そう…。
「あ、そういえば友島ってさ。」
おぉ、話題出してくれた…。
「ん?」
な、な、何を聞かれるんだろう…
「好きな人いるって言ってたよな?」
「え!?言ったっけ!?」
「言ってた言ってた(笑)」
「う、嘘ぉ…」
一気に顔が熱くなって、ほてってくる。
こ、これは早くも告白のチャンス!?
で、でもさすがに早すぎるかな…
「ねぇ誰なの?」
「もう気が付いてるよね?」
流れが良すぎる。もう言っちゃいそう…。
「全然わかんないんだけど。」
「皐月だよ。私は皐月が好き。」
もうどうなってもいいや。琴華って子が好きなのは知ってる。気持ちだけ…で、でももしかしたら…。
付き合えることも、あるのかな?
「え、本当に?全然気づかなかったんだけど。」
「本当だよ。皐月が好き。皐月のこともっと知りたい。琴華って子が好きなのは知ってるよ。それでも良いから、私が絶対皐月の側にいる。寂しい思いなんてさせない。だから、私と付き合って下さい。」
送信して、ハッと気が付く。私何言ってんの!?
で、でも琴華ちゃんが好きでも構わない。
きっとこれから楽しくさせてみせる。この私が。
「うん、良いよ、付き合おっか。」
「え、ほんと!?やった!!」
「うん、よろしくね。」
「うん!!!」
今思えば、ちょっと無理矢理過ぎる気がするし全然皐月のこと考えてなかったな…。
でも、私は12月8日。この日に人生で始めて、彼氏が出来ました。ちょっと胸が跳ねるような感覚。これが、私の中1の冬の始まりだった。
「でね、皐月とお付き合いすることになりました…(照)」
「本当に!?すごいすごい!!皐月はもう琴華は良いのかな?」
美明は少し不安げだった。
「わからない。でも、このチャンス試してみたいんだ。」
美明は少し驚いた顔をしたが、すぐに
「そっか、応援するよ。」と優しい目で言った。
でも、紅月琴華ってどんな子なんだろう…。
「ねぇ美明。琴華ってどんな子なの?」
「あれ、羽南知らないっけ?すごく美人で可愛い子だよ。少し不思議な雰囲気あるけど。」
「そ、そうなんだ。」
皐月もやっぱり可愛い子が好きだよね…。
私は、どちらかと言えば男っぽくて、お世辞でも可愛いとは言えない。昔から女の子らしさがなくて、モテたことなんて1度もない。本当は、小さいときはフリフリのスカートとか履いてみたかった。今でも、可愛いお洋服が大好きだし着てみたいって思う。でも、絶対似合わないんだろなって。髪もストレートのショートだし。琴華ちゃんみたいな可愛い女の子とは、あまりにも対照的だった。
「美明、私琴華ちゃんに会ってみたい。いや、でもいきなりは怪しいから見るだけでも!美明案内して!お願い!」
「羽南がそんなに言うんなら断れないよ(笑)良いよ、行こっか。」
「ありがとう!!」
美明に案内してもらって、高鳴る胸を抑え、琴華ちゃんのもとへ向かった。
彼女は、3組の教室に居た。
ちょこんと座って本を読んでる。ブックカバーをしてあって、何を読んでるのかはわからないけど。
「め、めちゃめちゃ美人…」本当にびっくりした。この一言しか出ない。
「でしょ?」少し美明は自慢気だ。
琴華ちゃんは、背が高くて、スタイルが良くて、おまけにすごく美人。大人しくて、とても女の子らしい。
「さ、皐月はこんな子が好きなんだ…」
皐月のことを知れた気がしたけど、すこし寂しかった。
「そうだよ。」
笑いながら言う美明を少しばかり睨んだ。
とても私とは正反対すぎて、あっけにとられていた。
バンッ!いきなり肩にぶつかられた。
どうやら、あっちが走って教室に入っていくようだった。
「いったぁ…邪魔なんだけど?」
「あ、ご、ごめんなさい…」
謝る美明をよそに、私はカチンときていた。
「あなたが少し避ければ良くない?それに、走ってるから悪いのよ。」
私は真っ直ぐ彼女の目を見て言った。
「ふぅん。言うじゃない。私が悪かったですよーだ。」
その子は、むすくれた様子で教室に入っていった。
「あの子、バスケ部の谷崎明日奈(たにざきあすな)。ほんっとに生意気だよね。」
そういって美明は口をとがらせた。本当にあの子は何者なんだろ。
とりあえずその日は、琴華ちゃんの姿を目に焼き付けて帰った。
午後6時過ぎ。部活から帰宅。皐月とのLINEタイムだ。
「ただいまー。」
「おかえり。」
「今日塾なんだよね。」
「そんなんだ、頑張れ。」
「うん。」
やっぱりどこか皐月はよそよそしくて、私に興味がないように見えた。
「そういえば、お互いのことあんまり知らないよね。」
「そうだね。」
「自己紹介!してみよ!」
私の提案に少し驚いたのか、返信には間があった。
「いいよ。」
「じゃあ私から!友島羽南、12歳。1月30日生まれのA型。趣味は音楽を聞くことで、好きなスポーツは水泳とバレーボール。バレーは正直、見る専だけどね。」
「そうなんだ、スポーツ好きなんだね。」
「うん!大好き!」
「まぁ俺は嫌いではないかな。」
「そうなんだ!じゃあ次は皐月ね!」
「皐月真弘、12歳。1月3日生まれのO型。趣味はアニメ見ることかな。好きなっていうか、やってるスポーツはサッカー。」
「お正月だ!」
「そうそう、俺の誕生日の特番番組ばっかり(笑)」
「そうなんだ~」
なんでだろう、部屋でLINEしてるはずなのに、そんなに寒いわけじゃないのにすごく足が震えてる。皐月とLINEしてると、ずっとこんな感じなんだ。私は何を、恐れてるんだろう。
時は経って、12月15日。私達が付き合って、1週間が経った頃。
あれからさらに少し冷え込むようになってきた。
付き合うってこんなもんなのかな?
すごく時が経つのが遅い気がする。え、まだ1週間?って感じ。
告白したのが1週間前だなんて思えない。もっとたくさんの時間を過ごした気がする。
私は確かに皐月のことが好きなはずなのに。
付き合えて嬉しいはずなのに。毎日LINE出来てて、充実してるはずなのに。何がこんなにも私の心を震わせるのかなぁ…ふと、独り言をもらす12月の昼頃。その独り言は、雪と一緒に消えていった。
