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私の心はもう鳴らない
- 2『付き合うって』 -

【これまでのお話】
中1の委員会をきっかけに仲良くなった、主人公の友島羽南(ともじま はな)とその友達、皐月真弘(さつき まひろ)。
いつしか羽南が真弘に恋心を抱くようになり、2人の関係は急展開。羽南は、真弘への恋心を大親友の桜木美明(さくらぎ みはる)にだけ伝える。
その数日後、羽南はLINEを始め、真弘と交換した日に告白。
そして真弘は羽南の告白を受け入れ、2人は付き合うことに。
しかし、真弘には紅月琴華(こうづきことか)という長年心を寄せる人がいた。
付き合ったのに、どこかよそよそしい真弘を気にする羽南。
羽南に興味がないように見える、真弘。
2人の物語、2話目が始まります…






今日は終業式で授業はない。
明日からとうとう冬休みになる。皐月に会えなくなっちゃうな~…。
冬の晴れた夜空。それは澄んでいて、とても綺麗だ。
空には、私が大好きな星が輝いている。
久しぶりに見た星が、どうしよくもなく綺麗だったことは今でも覚えている。
歩いていると、上着を抜けて伝わってくる風が冷たくて全身が引き締まる。
「今日は疲れたね~。」と、美明がはにかんで言った。
その顔は、鼻が少し赤くって可愛いかった。
「こんなにトレーニングだけで遅くなったの初めてかもね。」と、私は少し笑いながら言った。2人で帰るこの時間はすごく楽しくて、落ち着く時間。
一生涯、絶対に忘れることはないと思うな。
私達水泳部は、冬は泳ぐことが出来ないのでずっとトレーニングなのだが、今日はトレーニングだけなのに6時半まで部活をしていた。こんなに遅くなったのは初めてのことだった。
少し田舎のこの町の街灯が、私達を白く照らした。
その白さが反射して、私たちがここに居ることをはっきりと教えてくれる。
部活の帰り。美明と2人。
いつか皐月とも、2人で帰ってみたいなって思った。
そんなことを考えただけで、少し顔がゆるんだ。
あ、私あの人の彼女なんだよな。いつかあるかもしれないことなんだろうなって。
私の少し前を歩いていた美明が、「じゃあまた明日ね~。」と振り返って小さい手を振った。「バイバーイ。」と私も手を振り返した。遠ざかっていく美明の後ろ姿を見送った。
帰り道の十字路で私達の家は分かれる。
朝も、その十字路で待ち合わせをしている。
十字路と言っても素朴なもので、周りには落ち着いた民家がひっそりとたたずんでいるだけだ。
1人になって美明に背を向けた瞬間、私は自分の世界に入り込む。
全てが無くなって、皐月が頭をよぎる。やっぱり私はこの人のことを1番考えてしまうみたいだね。
今日は、12月22日。私達の2週間の記念日。のはず。
2週間か。まだ2週間か。
何でこんなに時が過ぎるのが遅いんだろう?
楽しい事は、時間が過ぎるのが早いはずなのに。
付き合えて、楽しいし嬉しいはずなのに。
好きなんだから付き合ってる、何もおかしいことはない。それが恋人だもん。
何がいけないのかな…?
そんなことを考えて歩く冬の夜道は、どこか寂しげだった。好きな人を思う夜は少し辛かった。お腹の奥が苦しくなって、胸が少し痛くなる。
汗が残った額に風が当たって冷たくて、あぁ早く帰ろう。と、家へと急いだ。
美明が居ないせいか、私1人で見上げた夜空はさっきより静かだった。

「ただいまー。」家の扉を疲れた腕で開ける。外とは違う暖かい空気が全身を包む。閉じかけたドアが、ヒュォーと音をたててゆっくりと閉まっていく。
おかえりと遠くから小さい声で母の返事が聞こえた。
きっとリビングで晩御飯の用意をしてくれているのであろう。
急いで階段を上がり自分の部屋に行って、皐月に帰ったことをLINEで知らせる。
「今帰った。」って。何かこの時間がすごくほっこりする。あぁ、彼女なんだなって。身をもって感じることができる瞬間である。まだ既読は付かない。
その画面のままのスマホをボーッと眺めていると、1階から「早くお風呂入っちゃいなさーい。」というお母さんの声がした。
「はーい。」と返事をすると、お風呂場へ向かった。
下着とパジャマを持って階段を降りる。薄い茶色の段差がミシッと音を立てて私を支える。
洗面所で服を脱ぐと、ショートカットの髪の毛が静電気でバチバチと音を出した。その髪の毛が頬に当たって少しピリッとする。
髪の毛と体を洗って、狭い湯船に浸かる。
ちゃぽん。優しい音がした。今日1日のいけない行いが、ここで洗礼されている気がする。
ふぅ…。思わずため息が出た。今日も疲れた。つかの間の静寂。湯気で視界が白くなる。ボーッとする頭によぎるのは、やはり皐月のことだった。「時間の過ぎ方、かぁ…」独り言をもらす。こんなに遅く感じるなんて、おかしいのかな…。で、でも!せっかく付き合えたんだし!私は皐月の彼女でしょ!そんな時間の感覚なんてすぐなくなるよ!
そう自分を慰めるしか無かった。私は勇気を出したんだ。頑張ったんだ。だから、大丈夫。もう、そう思うしかない。そう決心して、お湯に頭のてっぺんまで浸かった。
熱いお湯が、顔まで張り巡らした。

お風呂から出ると、「遅かったわね、珍しく長湯じゃない。」とお母さんに驚いた顔で言われた。
「そう。長湯しすぎた。」赤くのぼせた顔で答えた。まだ指がふにゃふにゃで、風呂上がりを全身で感じる。おもむろにキッチンに向かい、冷えた牛乳をぐびぐびと飲んだ。
色々考えてたら、頭ボーッとしてきて危なかった…。皐月の破壊力はすごい。好きな人ってすごい。何も考えれなくしちゃうから。
「早くご飯食べちゃって。」とお母さんに急かされながら、晩ご飯をかきこんだ。いつ食べてもお母さんのご飯は美味しかった。

「お腹いっぱいぃ…。」私は幸せそうな声をもらして、自分の部屋に戻った。やっぱりお母さんのご飯は美味しいと心から思った。
携帯を開くと、皐月からの返信が来ていた。少し胸が高鳴って、急いでトークを開く。すると、「そうか」ただそれだけ。本当に素っ気ない。ただの友達(それ以下かも)みたいな会話。別に私に興味なんてないんじゃないかな。どうでも良いんじゃないかな。でも、ならどうして付き合ったりしたの?
彼氏のことちゃんと信じないといけないってわかってるけど不安になってしまう。
私のこと、好きではなくても興味があるから、気になるから付き合ってくれたんだよね?そうだよね?
ねぇ、お願い。
いつか「お前が1番」って言ってくれないかな。
…そんな日は来ないよね。
こんなときから、私はそう思ってたのを今でも忘れはしない。

もう学校は冬休みに入ってしまっているから、皐月には会えていない。付き合ってるんだから、2人で会うとかしたいのに。でも、お互いの家知らないしなー。相変わらず、皐月の態度は素っ気なかった。
今私は、塾で勉強しているにも関わらず深いため息をついた。
「友島が悩みごとか~?」
っと言った先生の一言で、教室は爆笑の渦となった。
まぁいつも元気でうるさいくらいの私がため息なんて、確かにらしくないのかもしれない。て、私だって悩みくらいあるっつの!
でも私よ!ポジティブに前を向いて生きるべきだ!
どこの誰が言った言葉かなんて私には知りもしないが、このときはそんな使いふるされた言葉で自分を慰めることしか出来なかった。
塾を終えて、ふと携帯を見ると皐月からLINEが来ていた。
内容は…
「友島、俺たちもう別れないか?」……
うそ…なんで…?う、うまくいってなかった?何か不満があったの?なら早く言えば良いのに。そんなに私に信用がなかったのかな?
彼女として、申し訳無さも少し感じた。
寒いのかショックだったからかどっちかわからないが震えている手で、私は必死に返信した。
「どうしたの?何かあったの?」って。
返信は驚くことに、すぐに帰ってきた。
その通知のせいで、今までにないくらい心が鳴った。
その音は、苦しいくらいに全身をかけめぐり、とどまって、出ていこうとはしなかった。
「嘘だよ!うそ!こんなんで騙されてちゃ、俺の彼女やってけないよ~?」
と、返ってきた。
な、な、なんだ、う、嘘?
でも文面からして何となくだが、嘘じゃない気がする。
いや、でも彼氏を信じるべきだよね。そうそう、信じなきゃ。そう思う気持ちとは裏腹に、心臓がバクバクいっておさまってくれない。
「バ、バーカ!わかってたし!」と打ち返して、私はサドルをまたいだ。
さっきの言葉が頭をよぎった。そうだ、こんな関係いつまでも続くわけない。彼は私を愛していないんだから。いつか終わりがやって来る関係なんだ。そう思うと、涙がポロポロとこぼれ落ちてきた。
なんで私じゃダメなのかな。ゆっくりでも良いから、好きになってほしいのに。
良かった、今ひとりで。じゃないと周りの子に心配かけちゃうところだった。
真冬の寒さの中、私は自転車をかっ飛ばした。

家につくと、皐月から返信が来ていた。
「なら良かった~笑おわびに、冬休みどっかいこっか?」心がドクンと高鳴った。
「本当!!?やった!!!」と私は興奮ぎみに打ち返す。
やっぱり皐月を、彼氏を信じて良かったのかもしれない。
1階から、ただいまくらい言いなさーい、と母が怒っているのが聞こえた。軽く返事をしながら、私は皐月の返事を待った。
しばらくしてから返信がきて、「ROUND1(ラウンドワン)とかで良いんじゃない?」と来た。
「いいね!あそこなら、色々遊ぶのあるし」と私は賛成の意見を送った。
「んじゃー三浦カップルも誘っとくな~」と皐月から返信があった。三浦カップルというのは、私たちと同時期くらいに付き合いだしたカップルで、男子が三浦洸斗(みうらこうと)、女子が三浦彩葉(みうらいろは)という。決して彼らは、親戚とかではなくてたまたま名字が一緒だということで、仲良くなったみたいだ。
私はてっきり、皐月と2人きりだと思ってたのに…これじゃダブルデートだ。洸斗のほうは小学校から一緒だったし、しゃべったこともあるけど彩葉ちゃんはちょっとよく知らないんだよな…。
でも皐月がどんどん計画をたてていってしまってて、今さら行かないなんて言えない雰囲気になってしまっていた。まぁ皐月も一緒だし行ってみても良いか…
まとまって決まったことは、行く日は12月28日。三浦カップルと皐月と私で、ROUND1に行くことになった。
寒いだろうな。どんな格好していこう。なんとなく手に息をかけて、温めた。
私はこの日が最後になることを、このときは知らなかった。

あれから毎日頑張って、部活も大晦日の休みになった。今年は、28日から年が明けての4日までが休みとなっていた。
だからちょうど遊びに行く日は部活が休みだった。
朝早くに起きると鼻の頭が冷えきっていた。吐く息は白くて、「冬の朝」って感じを全身で感じた。寝ぼけた頭でトイレに行って、適当に朝食を食べた。昨日から考えてあった少しおしゃれをした服を着て、髪の毛を整えて…。
準備していると、すっかりデートにいく乙女な女の子じゃないか。と思い、ひとりで笑ってしまった。
皐月の私服を見るなんて初めてだ。どんな服の趣味してるのかな?皐月なら、きっと何を着てもかっこいいと思うんだろうなぁと思った。私、皐月のこと好きなんだなぁ。寒い外の空気とは違って、心はひどく暖かかった。バカだなぁ。このときの私。
ななめがけの小さな鞄を背負って私は家を出た。

少し町の方に出ないといけないから、今回は電車を利用する。なので、待ち合わせは駅だった。自転車で行こうか迷ったけど、終わったあとに歩いて帰れた方が良いなと思ったから、結局徒歩で駅まで向かうことにした。
私、彩葉ちゃんのこと全然知らないけど大丈夫かな…。
空を見上げると、もうすっかり星はなくなってしまっていて。当たり前か、と思い視線を下に戻した。相変わらず鼻の頭が冷たくって、吐く息は白くて。何にも変わらないはずなのに、少しうずうずする。…早く会いたい。
で、でも話すこといっぱいあるかな…大丈夫かな…。
そんな心配をしているうちに、足は駅へと向かっていた。
「友島~!!」こっちに向かって手を振って来るのは、間違いなく私の彼氏の皐月である。可愛いなぁ…。
今までの不安が全部吹き飛んだ。それくらい、彼の笑顔には破壊力がある。大好きな笑顔。
「皐月ー!」私も笑顔で振り返した。近付くにつれて、彼の鼻も赤いことがわかった。かなり前から待っていてくれたのかな?
「ずっと待ってたの?」
「楽しみで、家早く出すぎちゃった。」私が聞くと、照れながらへらへら笑う君が可愛いかった。あの笑顔は今だって忘れないよ。
好きだよ。大好き。だったよ。
2人で笑いあったあの日を、絶対に忘れなんかしない。
そう、あれは私たちの別れの日なのだから。

やっと2話目です!遅くなってしまいました。
読んでいただけたら、とても嬉しいです!
よろしくお願いします。
<2017/06/08 19:44 夜咲みあと>消しゴム
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