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- ここを乗り越えたい -

そんな歓喜に満ちたのも束の間・・・。
僕は初めて背泳ぎ級となり、新しい泳ぎ方、背泳ぎを習得していくこととなったのだが、この背泳ぎ、僕は、選手になった今でも大嫌いだ。
まあ、自分に合わなくてうまくいかないだけで、背泳ぎにも、背泳ぎ選手にも何の罪も無いのだけど。
さて、ついでだから、僕が背泳ぎが嫌いな理由も言っておこうと思う。
僕が背泳ぎが嫌いなのは、苦手だからなんだけど、じゃあ具体的にどんなところが苦手なのかというと、まず、少しでも気を抜くと曲がってしまい、真っ直ぐ泳げない。
だから、同じコースで泳ぐ人に迷惑を掛けないよう、背泳ぎを泳ぐ時は横目でチラチラとコースロープを確認したり、真上の天井のフラッグなんかを見たり、プル(手)とキックの力が左右同じになるように意識したり、それにスピードという要素も加えられ、やっと真っ直ぐ25mを泳ぎきるのだが、それ以上泳ぐのは本当にきつい。
勿論、泳げないことではないのだけど。
で、このときは初めて背泳ぎをやるから、特別好きとか嫌いとか得意とか苦手とかなく、取り敢えずやってみようという感じだった。
前にも言ったけれど、板キックは既に出来ていたので、まずは板無しキックからと目標が設定された。
手はピンと前に伸ばして耳の横にくっつけ、足のキックだけで進んでいくのだ。
だが、では板無しキックをやってみましょうとなりそーっと水の上に仰向けになってみると、とてもこわいのだ。最初、うつ伏せになるのもこわかった時代もあったけど、それ以上にこわかった。
だから、すぐに足をつけてしまった。
コーチは僕のことを何でも出来る優秀な子だと思っていたからゴーグルが壊れたかなとか色んな言葉を掛けてきたけど、こわがってるということには気付いていなかった。
負けず嫌いの僕はこわいというのが何か嫌で、取り敢えずもう一回やることになった。
少しでも時間を稼ぎたいと思っていつもよりゆっくりゴーグルをセットしたりしてみたけれど、結局はやることになる。
だけど、一度覚えてしまった恐怖は僕の心と体を蝕み、心の中ではやらなきゃだけどこわい…という葛藤が繰り広げられ、体は絶対に動きたくないというように全然動いてくれず、散々だった。
同じチームの子供たちはこの子どうしたの・・・?というような目で見つめてくるし、流石のコーチも原因がわからないことへの苛立ちと他の子達への指導が出来ないことに焦りを感じ始め、取り敢えずプールからあがれと指示する。
僕は遂に泣き出した。
ゴーグルで必死に隠しながら、声をぐっとこらえて。
涙は静かに流れてくる。
元々水泳が嫌いで苦手だった昔が思い出され、僕には水泳の才能はないんだと、もう水泳なんか辞めたいとそう思い、自分でもよく分からなかったけれど、プールからあがってプールサイドを走り、採暖室に駆け込んだ。

<2017/04/04 14:17 林檎>消しゴム
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