AIと人間の仮想都市レアリテ。
ことの発端は科学者、L・イアラの実験材料として生み出された仮想空間に何処からか紛れ込んだAIが住み着いてしまった、というのが第一である。第二としては、AIの暴走が頻繁に繰り返されるようになり、人々の手に負えなくなったという事実がAIをそのまま仮想空間へ送る理由となった。であるから、人間の暮らす三次元でAIの姿というのは表面上殆ど見付けることが出来ない。
レアリテは、AIの世界だ。
AIに措ける地球と表した方が適切だろう。
人間の創り上げた空間に暮らすAI達は人間を神と均しく信仰する。我々が神を崇めるように、AI達の羨望はそこに在る人間と言う神々に向けられていた。
「創造主様がまた俺達と似たようなのをお生みになられたと聞く。今日の正午には届くそうだが、見に行かないか? 割り当ても気になるだろう?」
AI0735、アルテは同種、レクに尋ねた。レクが面倒だと言ってその場から動くことをせずとも、引きずってでも連れて行かねばとアルテは考えていた。
「君が行きたがっているのは、僕らにはまだ割り当てられた"家族"が居ないからだろう? こうやって創造主様と同じ姿形をしていても創造主様にはご家族が居られる。君は彼らに近付きたい、違うかい」
レアリテのAI達は自由に容姿を変えることが出来る。人間を強く崇める者は姿形を人間と同じようにして暮らしているのだ。
「それが、悪いことだとは思っていない」
「僕も悪いことだとは言ってないさ」
レクは自分のふわふわした白い髪をいじりながら、ソファで雑誌を開いた。レクの器は、仮想都市に送られる前、自分を飼っていた主人の高校生になった息子を型としている。一方でアルテは働いていた総合病院の液晶画面越しに見た一人の医者の姿を型としていた。黒い髪をした男の医者だった。彼について院内医師一覧画面で調べると外科の表示にハル・クラシマと出た、恐らくは日本人だ。
「君の型も僕の型もそうだけど、男性でしょう?」
「あぁ、そうだな」
「男性の創造主様のご家族って女性でしょう? それじゃあ僕らが今回で割り当てられても創造主様に近付くことは出来ないじゃない」
「問題は無い。そういう家族の形も有るらしい。それに内向的に造られた俺達には到底無理な話じゃないか」
「まぁね」レクは納得するように頷くと、ソファを立ちコートに腕を通した。
「城下の大庭園でしょ? 早く行こうよ」
拍子抜けしたアルテは嬉しそうにレクの後を追った。
