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浅葱色の華
- 第十話 夢 -




今日もいい天気だなあ…。
なんて、庭の掃き掃除をしながら考える。
穏やかで、柔らかい日差しが差し込む庭。
こんな日々が、ずっと続けば良いのに…。
「桃華ちゃん。」
「はい、何でしょう?」
不意に聞こえた優しい声に、くるりと後ろを振り返る。
そこには、旅支度を整えた平助さんが立っていた。
「今から江戸へ隊士募集に行くので、挨拶はしておこうと思いまして。」
「あっ、そうなんですね!…江戸かあ……道中、お気をつけてくださいね。」
「はい。」
江戸……遠いなあ……。
少しの間、平助さんとの稽古もできなくなっちゃうのか…。
なんてことを考えていると、心を読んだかのように平助さんは私の顔を覗き込む。
「僕がいない間は一君に稽古をお願いしています。怠けちゃダメですからね?」
「…へっ…!?あ、はい!!」
驚きすぎて大きな声が出てしまった私に、平助さんは少しだけ目を見開いた。
でも、すぐに笑みが戻ってくる。
「じゃあ、行ってきます。」
屯所の門の前で、私たちは向かい合う。
平助さんはもう一度荷物を確認して、
「はい、行ってらっしゃい!」
ゆっくり江戸へ歩いて行った。






体にあたる雨がひどく冷たい。
小さく震える体を、思わず両手で抱きしめた。
隣には、同じように震える体。
漆黒の髪の毛から、長い睫毛から、雫が滴り落ちる。
生気のない瞳は、どこを見ているのか。
「…へい………に…」
小さく呟く言葉は、雨で隠れて上手く聞こえない。
私たちは、これからどうなるのだろう…。
そんな時。
じゃり、じゃり…と足音が聞こえてきた。
目の前に、人の足が見える。
ゆっくり顔を上げると、優しい顔をした男の人が私たちに手を差し伸べていたーーー




「っ!」
ガバッと起き上がる。
夢…?
何だったんだろう…。
雨の中、私が………
「桃華様、朝ですよ。俺も朝餉当番ですから、頑張りましょうね。」
「あ、うんおはよう!すぐ行く。」
あれ、何だったっけ…。
八十治の声で忘れちゃった。
忘れるくらいなら、特に重要でもないのかな。
それより、八十治が待っている。
私は夢のことを頭から追い出して、急いで着替えることにした。


「夢を見たのに忘れちゃう?あー、よくありますねぇ。」
「ですよね。」
一ノ瀬さんがもの凄い早さで葱を刻んでいくのを横目で見ながら、漬け物を切る私は夢の話をした。
一ノ瀬さんにもそういった経験があるようで、大きく頷いてくれる。
「あ、これくらいで良いですか?」
葱を刻み出してから少ししか経っていないのに、もう切り終わったようだ。
「はい。」
ぴっしりと整った輪切りに内心かなり驚く。
一ノ瀬さん、本当になんでもできるんだなあ。
「…そういえば。」
「?」
「一ノ瀬さんって、私より年上ですよね。敬語使わないで大丈夫ですよ?」
「…!」
私が言うと、何処となくキラキラとした目でこちらを見ているような気がした。
な、何かな…?いけないことでも言ったかな…?
「ボクを年上として見てくれるんですね!もう中学生の時なんか小学生に年下に見られたりナメられたりで大変だったんですよぉ!!ああ…嬉しい……!お言葉に甘えますね!」
「は、はあ…」
何やらよくわからない言葉を使いながら感動を表してくる。
ぽかんとしていると、一ノ瀬さんは慌てたように両手を振った。
「い、今のは気にしないで。
…ボクだけタメ……敬語じゃないのも不公平だよね。えーっと、桃華ちゃん…で良い?も敬語使わなくて良いよ。」
「え、でも…」
流石に一ノ瀬さんに対してそんな…。
といった戸惑いを交えながら言う。
「良いの。ボクが頼んでるんだから。凛って呼んで、敬語禁止!わかった?」
「……」
腰をぐっと曲げて上目遣いにこちらを見る一ノ瀬さんに、言葉が詰まる。
というか、女子よりも女子らしい……可愛い……!
「……わか、り……わかった。
凛君…で良いのかな?」
「うん!それで良いよ。」
観念しておずおずと言う。
すると、凛君はにぱっと笑顔を見せた。
「…桃華ちゃんって、照れると可愛いね。もともと色白な肌がほんのり赤くなって…。
男装しているの勿体無いなあ。」
「へっ!?」
不意打ちのように放たれた言葉に、危うく指を切るところだった。
「ちょっと、危な…!」
「あ、ご、ごめん…」
凛君に手を押さえてもらわなかったら、血まみれの漬け物が出来上がっていたかも…。
「そ、そんなお世辞言ったって、何もでないよ…?」
「お世辞じゃないよ!」
と凛君はむくれてみせる。
「可愛い子を可愛いって言って何が悪いの?
ボク、可愛くない子に可愛いなんて言わないよ。」
「ーっ!!」
顔が、カッと赤くなるのを感じた。
「貴様…桃華様をたぶらかすとは、許せん…!」
「ちょっと、八十治!」
八十治はすぐ人に突っかかるんだから…!
しかし凛君は全く気に留めずにっこにこ。
「八十治君も可愛い!二人は本当に兄妹じゃないの?」
「容易く君付けするな!」
「あははっ、良いじゃん減るもんじゃないし。」
「一ノ瀬の好感度は右肩下がりだ!!」
酷いなあ、なんて苦笑する凛君。
完全に八十治は弄ばれているようだ。
つい、笑ってしまう。
「ほら、早く支度しないと怒られちゃうよ。急ご?」
「うん!そうだね。」
「話を聞け!!」
その後、うるさいと叱りにきた土方さんと八十治の喧嘩が勃発したのでありました。



凛君はかなりかわいいキャラ目指していきたいと思います。
そして今見たら閲覧者数が111人でテンションあがりました!ありがとうございます!
<2017/03/25 20:41 水瀬 玲>消しゴム
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