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浅葱色の華
- 第十三話 雨 -





「あっ…」
ぽつり、ぽつり。
何だか嫌な予感がして外を見てみれば、ちょうど雨が降ってきた瞬間だった。
洗濯物、出したままだ…!
慌てて外に飛び出す。
と、違う方から平助さんも飛び出してきた。
「「……」」
目が合い、お互いわずかの間静止。
「「……あはっ。」」
二人で流石だなあ、なんて小さな笑いがもれる。
しかし、本格的に降り出した雨のため、そんなことは気にしていられなくなった。




「本当に強いですね…」
ざあざあ降る雨の音を聞きながら、小さく呟いた。
「本当だね。」
「雨は嫌ですー…」
「桃華様を濡らさぬためならば、この八十治、喜んで傘になります!」
それに様々な反応を示す三人。
凛君、平助さん、八十治だ。
凛君はあのことがあって少し気まずいかな…と思いきや、いつも通りに接してくれたので何もなかったことにしている。
「…?」
急にハッと顔を上げた八十治に、私たちは顔を向けた。
「何か……音と匂いが…」
八十治の言葉を聞いて、無言で外へ耳を傾ける。
じゃり…じゃり……と足音…にしては変に遅いけれど……。
匂いは……鉄のような……?
「血の匂いと、足音ですね。」
考え込んだ私と凛君のことは気にせず、あっさり平助さんが言い放った。
「…流石です。」
「でも、誰の?まさか……幽霊……」
「あはははははそんな足音聞こえているんですからそんなわけあはははは…………」
平助さんは怖い話が苦手なのかな?
壊れたように「あははははは…」と笑っている。
「じゃあ、見てみますね。」
私は立ち上がり、スパンッと障子を開けた。
「……え?」
そこにいたのは、血まみれの沖田さんでした……。



私の姿を見た途端、膝から崩れ落ちた沖田さん。
慌てて駆け寄る私と傘を差し出す平助さんも気にせず、声をあげて泣き出してしまった。
凛君は手ぬぐいを、八十治は土方さんを呼びに行く中、なんとか話を聞いてみる。
「山南さん……山南さん…!」
が、こればかり。
「どうしたんですか?泣いてばかりではわかりませんよ。」
平助さんが汚れるのも気にしないで膝立ちのまま一歩近づいた。
そのまま沖田さんの顔を覗き込む。
「……した……」
「?」
「俺が……山南さんを…斬ったんだ……殺したんだ……俺がもっとあの時止めていれば……山南さんを説得して逃していれば……俺は、山南さんを…………」
「「「ーっ!?」」」
山南さんを!?
驚いた私たちは息を飲んだ。
沖田さんはそれからまた声をあげて泣き始め、八十治に連れられてきた土方さんも廊下からじっとこちらを見つめてくるのみ。
…しばらく、雨の音と沖田さんのしゃくりあげる声だけが静かに響く。
それを破ったのは、土方さんの足音だった。
一歩ずつ、ゆっくりと傘もささずに沖田さんに近寄る土方さんを、私たちはぽかんと見上げる。
やがて沖田さんの前まできた土方さんは、膝立ちの状態になった。
崩れ落ちるように。だけれど、脱力はせず。
「……総司…」
ただ一言だけ雨の中に落とすと、そっと沖田さんを抱きしめた。
「すまない…」




後から話を聞いたところ、山南さんは局中法度に基づき切腹することになっていたという。
その際、山南さん自身から沖田さんを指名。
沖田さんはただ一人で山南さんを粛清しに行ったのだとか。
それを聞いて、私たちは絶句した。
山南さんを心から尊敬し、時には自慢げに山南さんを話をしてきた沖田さん。
その沖田さんが山南さんを斬ることになるなんて、誰が予想しただろうか。
私ではなく沖田さんが辛い筈なのに、私までも胸が締め付けられるような気がした。
あれから少しだけ落ち着いたかもしれない沖田さんは、私たちに「ごめんね、馬鹿みたいなところ見せちゃって。」と謝っていたけれど………。
妙に悲しげだったその笑顔が、頭から離れない。
「どうしたの桃華ちゃん?」
「え?」
不意に凛君に顔を覗き込まれ、間抜けな声を出す。
今は夕餉の支度をしているところだ。
「元気ないよ。」
「そう…かな?」
聞き返すと、凛君は「そうだよ」と頷いた。
「………総司さんのこと?」
「っ…」
図星だ。
私の表情を見て何か察したのか、凛君は「やっぱり」なんて言う。
「ボクだったら、桃華ちゃんに心配かけたりしないのに…」
「え?」
「なんでもないよ。」
凛君は首をかしげた私にひらひらと手を振って、切っていた野菜を鍋の中に入れた。
「よし、これでOK。そろそろ食器の準備もしないとね。」
「そうだね。」
おーけーが何の意味なのかわからないのだけれど、もう聞かないことにしている。
そういった言葉の意味を聞くと、大抵凛君は顔を赤くさせたり青くさせたりしながら「何でもない!何でもないから忘れて!」なんて言うからだ。
「今日は平ちゃんが好きな煮物だから、いつもよりは食べてくれるかな?」
「そうだと良いね。」
……沖田さん、夕餉召し上がるかなあ……。
ちゃんと来てくれると良いのだけど。
そう思いながら、私はテキパキ用意する凛君に習って、急いで支度を進めたのだった。


これとこれの出来事起こる順逆かな…?と思ったら、みんな桃華が入ったことによるバグのせいにしてください。(私の記憶力のせいですすみません…)
<2017/04/22 18:30 水瀬 玲>消しゴム
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