「ん………」
夢を、見ていた。
はっきり、夢なんだなとわかる。…何故かはわからないけど…。
ふわふわした空間で、ふと三人の幼い子供を見つけた。
一人目は純白のさらさらした髪の毛に桜色の唇をした女の子。密度が濃いまつげに縁取られた大きな瞳が陶器のように白い肌によく似合う。
二人目はふわふわしたこれまた白い髪の毛の男の子。小さめな鼻が愛らしく、中性的で整った顔立ちをしている。
三人目は二人とは対照的に真っ黒な髪の毛の男の子。赤めの唇と長い睫毛が印象的で、男物の着物を着ていなければ女の子にも見える。
「お姉さん、どうしたの?」
最年長なのだろうか、白髪の男の子が一歩前に踏み出して聞いてくる。
「迷子?」
残りの二人は男の子の後ろに隠れるようにこちらをじっと見てきた。
「…ううん、迷子じゃない…はずだよ。」
曖昧な回答に首を傾げる男の子。
なんとも可愛らしくて、小さく笑った。
「お姉さん…何か良いことがあったの?」
「えっ…?……まあ、そうかな。」
女の子の問いに答えると、三人は花が咲いたような笑顔を見せる。
「そうなんだ!」
なんだか、とても和むなあ……。
それにしてもこの子たち、どこかで会ったような。
近所の子とか、かな?でもこんなにも整った顔に変わった髪色なら覚えてないわけないよね…。
「じゃあね、お姉さん。」
「え?」
言うと同時に薄くなっていく彼らの体に、目を見張った。
「あ、そうだ。」
白髪の男の子はいたずらっ子のように笑って、口元に人差し指をあてる。
「いつまで内緒にしておくつもり?」
「…?それってどういう…」
聞こうと思ったが、妙に眠気が襲ってきて、そのまま意識が闇の中に落ちていってしまった。
夢の中でも、眠くなるんだ………。
珍しく一人で目が覚めて、ゆっくりと起き上がった。
柔らかな光が障子の外から射し込んでくる。
なんか、神秘的というか……不思議な夢だったなあ…。
今朝はやることがないので、ゆっくりと着替えながら考えてみる。
引っかかるのは、最後の言葉。
『いつまで内緒にしておくつもり?』
可愛い顔には不似合いなほどに、鋭く光ったあの瞳。
何のことなのか、検討もつかない。
……なんだか考えてすぎて、頭がふわふわしてきた。
少し外の風に当たろうかな。
結局悶々としながら朝餉を済ました私は、道場にて稽古を受けていた。
「んー…桃華ちゃん、何か悩みごとでもありますか?」
「え?」
不意に動きを止めた平助さんに、ぽかんと聞き返す。
「色恋……とか?
いつもより動きが鈍くなってますよ。具合でも悪いですか?」
「あ、いやそれはないです!色恋もないです!」
「じゃあ、何です?」
「……」
そして、本当にふと、気づいた。
『いつまで内緒にしておくつもり?』
「話したくないなら別に良いですけど。さみしいなあ。」
声が、ほとんど変わらないのだ。声変わりはしているけれど、雰囲気や抑揚などは同じ。声の高さを合わせれば全く同じ声になるのではないかと、そう思ってしまうほど。
どくん、と脈が強くなる。
「……えへへ、何でもないですよ。強いて言うなら今日の夕餉のおかずですかね…。平助さんは何が良いですか?」
…結局、逃げてしまった。
ここで言っても平助さんが何か知ってる訳ではないだろうし、ただの夢だから。大丈夫。
平助さんは少し驚いたような顔をしてから、へにゃっと笑った。
「あはは、そんなことだったんですね。
んー……僕は高野豆腐が食べたいです。」
「わかりました。」
平助さんに夕餉を聞くと煮物と高野豆腐ばっかりだなあ……なんて思い、つい笑ってしまう。
「夕餉、楽しみにしていてくださいね。」
「はい!…あははっ。じゃあ、再開しましょうか。」
「はい!」
