藤堂さんと共に副長室に入った私をみた副長さんは、少し驚いたように目を見張った。
「……見違えるもんだな。普通にそこら辺に居そうな男子だ。」
「そうですか?」
ああ、と頷く副長さん。
「平助より男に見えるかもな。…ま、座れよ。」
「はい…」
「ちょっと土方さん、それはないですよ。ねえ桃華ちゃん?」
藤堂さんに顔を覗き込まれ、私は曖昧に頷いた。
「副長。」
と、急に廊下から声が聞こえてきて、私はついそちらを向く。
副長さんは声の持ち主が誰かわかっているようで、特に警戒もせずに返した。
「おう、斎藤か。入ってくれ。」
「失礼します。」
凛とした、やや高いけれど男性のものとはっきりわかる声。
障子を開ける音ともに、その声の持ち主は姿を現した。
「今日の巡察の報告を…と、そいつは。」
私を見るなり眉をひそめるその人。
サラサラとした焦げ茶色の髪の毛を一つにまとめ、色白な肌に憂いを含んだ顔がよく似合う。前髪は真ん中だけ少し長く、特徴的だ。
華奢な体に似合わない骨ばった指も、どこか美しい。
……ここは美男の集まっているところか何かなのかな。私、いて良いのかな。
「ああ、今日からの新入隊士だ。お前も自己紹介しておけ。」
「承知しました。
ぼ……、俺の名前は斎藤一。お前の名は?」
「あっ、麻木桃華と申します。」
急いで自己紹介をしてぺこりと頭を下げると、斎藤さんはわずかに頷いた。
あまり感情を出さない人なのかな。
「……」
「……」
「……」
……会話が続かない。
どうしよう、と藤堂さん達の方を向くと、二人は口を押さえて笑っているようだった。
「ふはっ……桃華ちゃんも一君も何か喋ってくださいよっ…!面白くって面白くって!」
「お前ら静かだもんな。だからって限度が…!」
「何を話せば良いのかわからないのに話せるわけ無いだろ!」
二人に…というより、藤堂さんに対してそう怒る斎藤さん。
仲……良いのかな。
「あのお二人は仲が良いのですか?」
そう副長さんに問うと、副長さんはああ、と頷いた。
「あいつらは同い年だからな。自然と仲も良くなったんだ。」
「同い年……!?」
斎藤さんと藤堂さんが!?
物凄く失礼なことはわかっている。
…でも、その……斎藤さんは藤堂さんより年上に見えるというか……。
「やっぱ最初は驚くだろうなあ。ま、よく見てりゃ同い年にも納得出来るだろうよ。」
「そうですか……。」
そんな会話をする私たちの横で、口喧嘩を始めた斎藤さんと藤堂さん。
「だいたい僕に話をさせたければそっちから話を振ってくれって言ったじゃないか!」
「えー…面倒臭いですし!そもそも話を振ってもらえないとお喋りできないのはどうかと思いますよー?」
「うるさい!お前なんか大嫌いだ!!」
「そうですか…うぅ……一君に嫌われたあ…」
「あっやっその…すまない、えっと…」
「うっそー♪」
「〜〜〜っ!!!!」
く、口喧嘩……?
思わず首をかしげる。
副長さんはそんな私たちを見てか、クッと喉を鳴らすようにして笑った。
「お前ら、良い加減にしとけよ。
…あと斎藤、お前一人称元に戻ってんぞ。」
「えっ?」
「『僕じゃなくて俺の方がなめられませんよね…?じゃあ今日から僕じゃなくて俺にします!』ってキラキラした顔で言ってたのは何処のどいつだよ。」
「なっ……!お、俺キラキラした顔なんて…!」
今度は副長さんと斎藤さんが色々と言い合い始めた。
斎藤さん、物静かな方だと思ったいたけれど、意外と面白い方なのかもしれないな。
「ふふっ。」
思わず笑ってしまった私を、驚いたように見つめるお三方。
「お前……笑えるんだな。」
「笑った顔も可愛いですね。」
「…」
「いや一君そこは一君も何か言うんですよ。」
「えっ?」
「いまいち締まりがねえっつーかよ……まあ良いか。
じゃ、お前は八番組に所属するか?」
副長さんに問われ、私はついきょとんとした顔をする。
八番組……?
副長さんは怪訝そうに顔を歪めた。
「土方さん、剣が使えるってわかってないのに隊士にして、尚且つ新選組知らないのに八番組だとか何とか…桃華ちゃん微妙な顔してますよ。」
藤堂さんの呆れた言葉に、副長さんは納得したように頷いた。
「それもそうか。
んじゃ、てめぇは俺の小姓ってことにすっか。
まあ剣が使えて困るこたあ無えから、せめて何かしら持っとけよ。後で買いにいくか?」
「あっ、いえ……短刀なら持っています。」
その瞬間、またもや驚いたように三人は私を見つめる。
「……あの?」
「…………そういやお嬢様だったな。護身用的なやつか…………。まあそれで良い。」
「僕全く気付きませんでした…」
「平助、組長としてそれはどうなんだ。」
何やらこそこそと話している三人。
私は、どうすれば良いんだろう………。
でもとにかく、ここでお世話してもらうのは決まったことみたいだ。
雑用でも何でも、出来ることは精一杯やらなくちゃ。
「……えっと、改めてこれからよろしくお願いします。」
言いながらぺこりとお辞儀をすると、
「「「はい!(ああ)」」」
三人はそれぞれ優しく笑ってくれた。
……先ず、新選組が何なのかをはっきりさせないとだな。ちゃんと聞こう。
