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浅葱色の華
- 第五話 池田屋のその後 -




「はいはい、ちょっと染みるぞ。」
「そ、そのちょっとはどれ位ちょっとなんですか痛っっっっったぁぁぁぁぁぁあ!!!!!」
背中だから変に転がり回ることもできず、叫び声を響かせる私。
はい、現在背中の傷の治療中です。
「よくもまあこんなにガッツリ斬られたもんだな。……その、すまねぇ…」
「い、いえ、私の不注意でしたし!!」
上から聞こえてきた声に、慌てて返す。
私が敵に気づかなくて斬られたのに、土方さんに謝られるなんて心苦しいというかなんというか……。
「…まあそうなんだが。」
「うっ……」
自分で言っておきながら、いざハッキリ言われるとやっぱり刺さる何かがある。
「…取り敢えず暫く寝てろ。山崎の指示に従えよ。」
「はい。」
土方さんは言いながら立ち上がり、そのまま外に出たようだった。
障子の閉まる音が、静かに響く。
「……薬を取ってくる。少し待っててくれ。」
「あ、はい。」
山崎さんも行ってしまって、急に暇になった。
やることもないし、出来ることもない。
つまらないなあ……。
池田屋事件から一週間。時間が経ったようで、経っていない…のかな?
藤堂さんの怪我はどうだとか、沖田さんの具合はどうだとか、山崎さんには少し聞いてはいるけれど、不安。
お二人は今、どうしているんだろう…。
「あ、土方さん!どこ行くんですか?」
「おう平助。もう平気なのか?」
「おい平助!!まだ寝てろ!」
「まあまあ、良いじゃん一君。俺たち暇なんだよ。」
「総司!お前もか!!」
「良いじゃないですか一君。ねぇー総司?」
「ねぇー?」
「ぅぅ……馬鹿ぁぁ!!もう知らない!!二人なんて大っ嫌い!!!!」
「……一君って男の子…ですよね?」
「「多分…」」
…………あ、うん、その、お元気そうでなによりです。
はあ…とため息を吐いた。
新選組に来てから、一ヶ月……いや、二ヶ月かな?
だいぶ受け入れられてきて、認められて、毎日が大変だけどとても楽しい。
でも、一人きりになるとどうしても…家のことを考えてしまう。
お父さま…お母さま……。
「…から!私は決して怪しいものではありません!ここに居るはずの桃華様に会いにきただけです!!!!」
「どう見ても怪しいだろうが!!!」
「……ん?」
外から聞こえてきた言い争う声に、思わず声を出す。
聞き覚えのある声が………。
い、いや気の所為だよね。こんなところに居るわけないし、そんなわけない。うん、ない。
無理に納得して、現実逃避のため目を閉じた。
「良いから!桃華様ぁ!!!」
「あっコラ待ちやがれ!!!!」
スッッパァァァァン!!!!!
「桃華様!!」
…………うん、駄目でした。
恐る恐る目を開くと、案の定見覚えのある姿が目に入る。
「八十治……?」
「ご無事でしたか桃華様!…って、どうされたんですかその傷!!誰にやられたんですか!?この八十治、今すぐにでも仇をーー「おい麻木!こいつ誰だ!!!」
「えっと……」
助けてください。




なんとか説明を終えると、土方さんはため息を吐きながら頷いた。
「なるほどな。つまりてめぇは麻木の使用人ってわけだ。」
「桃華様を呼び捨てとは無礼な…!」
「八十治!」
私の隣で立ち上がる眼帯をつけた男性……お付きであった八十治は、私の声にむくれながら座り直した。
どうやら、逃げ出した私を追いかけて調査に調査を重ね、居場所を突き止めたようだ。
「しっかし……お前、平助に似てんな。」
「平助?」
「あ、確かに……藤堂さんに似てますね。」
土方さんが呟いた言葉に、まじまじと八十治を覗き込んだ。
改めて見ると、目の形とか、髪の毛の質感とか、よく似ている。
藤堂さんは眼帯をつけていないけど、まるで写したかのようにそっくりだ。
「平助とは誰だ?」
「あー、呼んだ方が早いか。……おい!!平助!ちょっと麻木の部屋に来い!!」
「はーーい!!」
土方さんが外に向かって声をあげると、直ぐに返事が返ってくる。
声は似てない、かな。
スパーンッ!
「何ですか?」
「…もっと静かに障子を開けやがれ。
いや、こいつとお前って似てないかって話になってな。」
「ふ?僕とこの人ですか?
……う〜ん、自分ではよくわかりませんね。」
藤堂さんは首を傾げ、そのあとパッと顔を輝かせた。
「もしかして貴方、新入隊士さんですか?
八番組今人手が足りなくて大変なんですよぉ!入隊するなら是非八番組に!!」
「「「えっ……?」」」
確かにそう見えるかもしれない。
でも、新入隊士ではない…!
でも、どう説明すれば良いのか…!!
今の私たち(私と土方さん)の頭の中は、完全に一致していると思う。
「あーうん、そうだなー。お前は八番組にするかー。」
私たちは少しの間固まっていたが、土方さんの…その、あまりにも棒読みな言葉に動き出した。
「やった!よろしくお願いしますねっ!お名前なんて言うんです?」
「や、やや八十治ですっ!」
「八十治君ですね。僕は藤堂平助です!」
藤堂さんは八十治に微笑みかけ、
「要件はこれだけですよね?じゃあ僕もう行きますねー♪」
そのまま外へ出て行った。
直後、斎藤さんの怒鳴り声が聞こえてくる。
「平助ぇえぇ!!!寝てろって言ってただろうがぁ!」
……斎藤さん、お疲れ様です。
こちら側は、先ほどとは打って変わってしぃん…としていた。
私たちの間を、気まずい沈黙が流れる。
こんな中、動き出したのは八十治だった。
「貴様ァ!!桃華様を返してもらうために来たのに入隊させるとは何事だ!!!!!」
「八十治!」
「るっせぇなじゃあさっきの状況でもっと良いこと言えたのかよ!?あん!?」
「正直に言えば良いだろうが!!!」
「そんなんこいつを平隊士にまで女と教えるようなもんだろ!!」
「桃華様を男装させてるのか!?」
「今更かよ!!!!」
途端に二人で喧嘩…?をし始め、外の音など聞こえなくなってくる。
八十治、こんなのでやっていけるのかな…?
「っつーかてめぇ剣術は出来るんだろうな!入隊したのに下手クソだったら承知しねぇぞ!!!」
「貴様が勝手に入隊させたんだろ!!それに俺は免許皆伝だわアホ!!!」
「誰がアホだ表でろ!!!!!!」
…こんな土方さん、初めて見たかも。
八十治もこんなにムキになってて…。
少し、面白い。
「よし良いだろう、剣で決着つけてやる!」
「望むところだ!!土でも舐めさせてやる!」
「何だと!?」
「あん!?」
気がついたらここまで展開していて、私は慌てて止めようとした。
「ち、ちょっと二人とも落ち着いてください!」
「「これが落ち着いていられるか!(いられますか!)」」
しかし二人に揃って怒鳴られ、
「す、すみません…」
ついすごすごと引き下がる。
「おい貴様!!何桃華様に謝らせてんだ!!」
「てめぇだって怒鳴ってんだろうが!!」
「「あん!?」」
ああもう、どうすれば良いんだろう…!
八十治だけなら怒れるけれど、土方さん相手だと怒るに怒れないし…!
「……何やっているんですか副長。仮にも隊をまとめる立場の人が恥ずかしくないんですか?
お前も一応隊士っつう身分になったんだから副長に喧嘩売るんじゃない。」
不意に聞こえた冷たい声に、私はハッと顔をあげた。
「山崎さん…っ!」
今の私には、山崎さんが救世主に見える。
「…わ、悪ィ山崎………。というか、こいつの事情知っていたのか?」
「…藤堂組長が出て行った時からもう居ましたからね。取り込み中のようでしたんで待っていましたが。」
「「「えっ……」」」
全く気がつかなかった…。
チラリと二人を見ると、二人ともぽかんとしていた。
…まああんなに大声で喧嘩しておいて気づいていても凄いけれど。
山崎さんは一つため息を吐いて、薬と白湯を差し出してくれた。
「ほら、薬。」
「あ、ありがとうございます…」
おずおずと手を伸ばし、それを受け取る。
「…『石田散薬』?」
「副長の実家で作られている薬だ。(本当に効くかはイマイチやけど)打ち身や切り傷やどに効くらしい。」
い、今何か聞こえたような…?
ま、まあ山崎さんのボソッとした呟きは聞かなかったことにする。
「そうなんですね。」
何とか痛みに耐えながら起き上がると、包みを開いて口の中にサラサラと入れた。
「〜〜っ!?!?」
に、に苦いっ…!!!
粉末だから口の中に広がって、顔をしかめてしまう。
「と、桃華様!薬は先に水を口に入れた状態で飲むんですよ!」
「ひゃ、ひゃきにひってはほひ…!(さ、先に言って八十治…!)」
急いで白湯を飲むものの、苦味はそう簡単に消えてくれない。
う〜〜…!!
山崎さんは私がこうなるのを見越してか、用意してあった水を差し出してくれた。
「ほら。」
「ひぁ、ありがとうごじゃいます…」
それを飲み終えて、やっと落ち着いてくる。
ほう、と一息吐いた。
「…ふはっ、お前ってやっぱどこか抜けてんな。」
「そ、そんな事ありませんし!」
「そうだぞ貴様、桃華様を貶すんじゃない!!」
「そうじゃないよ八十治!もう!」
相変わらずな八十治を軽く叩く。
また喧嘩が始まっちゃったらどうするんだか……。
でも、土方さんは先ほどみたいに八十治を睨んだりしていなかった。
むしろ、もっと大きな声で笑い出す。
「「何ですか(だ)土方さん(貴様)」」
「いや、…ふはっ、お前ら…はははっ、似てんなやっぱ!抜けてるのは麻木だけじゃねえや…はっはははっ!」
「「……?」」
「……ふはっ…」
「「山崎さん(貴様)まで!」」
山崎さんまで笑い出し、一気に部屋の空気が軽くなった気がした。
何だか…おかしくなってきて、私も笑い始める。
「……ふふっ」
そんな私たちを見て、仏頂面だった八十治もへにゃりと笑顔を見せる。
何でおかしいのかもよくわからないまま、私たちは笑い続けた。
あまりに笑い過ぎて不審に思った斎藤さんと沖田さんがひょっこり覗きに来るまで、笑い声は響いていたのでした…。


喧嘩って書くの楽しいですけどキャラわかんなくなりますよね!(爽やかな笑顔)
<2017/01/23 22:14 水瀬 玲>消しゴム
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