おためし小説投稿

登録一切不要で小説投稿!
文字サイズ変更 
浅葱色の華
- 第六話 夢 -




「ん……」
『何で〜〜〜に白い子が…』
見たこともない人が、こちらを見て何か話している。
漆黒の髪の毛を揺らしながら、嫌悪にまみれた視線を送ってくるその人。
「しろ…?」
呟きながら首をかしげると、サラッと白い髪の毛が見えた。
私の、髪の毛が…?
『何でも良い!!白い〜〜狗なんて一族の恥だ!あっちの黒〜〜狼〜〜も……!!〜〜だ!直ぐに捨ててこい!!』
『で、でも!!』
『良いから捨ててこい!!!!』
『ーっ!』
いまいち聞こえないところもあって、話がよくわからない。
わかるのは、私が今から捨てられること。
『ごめんね…』
女の人が泣きながら私に手を伸ばしていくーーーー













「桃華様。桃華様!朝です、もう直ぐ朝餉の時間ですよ!起きてください!」
ゆっさゆっさと揺すられる感覚と、八十治の声にハッと目が覚めた。
八十治が来てから十日ほど。傷も殆ど癒えてきている。
「おはよう八十治……様付けはやめて…」
「あっ…申し訳ありません、麻木さん!」
「それはそれで他人行儀過ぎるんだけどな…」
相変わらずな八十治に苦笑が出る。
のそのそと起き上がりながら、ふと思った。
「……八十治って、私の生まれを知ってる?」
「桃華様の生まれ…………
特に主様からは聞いていませんよ。」
「そう…」
「どうかされたんですか?」
「…ううん。」
さっき見た夢、何だったんだろう。
あまり覚えていないけれど、私の髪が白くて、知らない人がこそこそ話してて……?
……あれ、何だったっけ……。
「……桃華様、今は目の前のことを何とかしましょう。」
「目の前のこと?」
八十治の真面目な顔にそう聞き返す。
「…………あんの馬鹿副長野郎を、いかにぎゃふんと言わせるかです!!!!」
「勝手にしてよ馬鹿!!!!!!!」



「ふう………」
「どうしたの桃華ちゃん。」
「あ、いや何でもないです…」
朝餉の準備の時間。
だいぶ美味しいご飯が作れるようになった一番組だけど、私はまだ炊事を一緒にやっていた。
特にやることはないし、むしろ何もできない私にできる数少ないことだから……最近ではほぼ全ての組と一緒にご飯を作っている。
「…悩み事なら聞くから。ちゃんと言いなよ?」
「あっ、はい…ありがとうございます!」
沖田さんに顔を覗き込まれ、急いで後ろに飛び退いた。
ち、近い……!
沖田さん、顔がとても整っているから何となくこちらが照れてしまう。
街のお姉さん方には親衛隊のようなものもある、らしい。
…確か藤堂さんや斎藤さんにもあるって山崎さん言っていたな……。
「そういえば、新入りの……八十治、だっけ?あいつ結構やるよね。」
「ぅえっ!?ぅぁあっ、そうですね!」
沖田さんが急に出してきた八十治の名前で、私は飛び上がった。
八十治と私に関係があることは一応内密に、となっている。
「副長相手に喧嘩…?をしていますしね。」
「命知らずだよな。」
「…ま、副長の表情は和らいでるように見えるけど。」
「あと藤堂組長に似てね?」
「似てる似てる!兄弟かと思ったし!」
やっぱり、他の人から見ても二人は似ているんだ……。
何か関係があるのかな。でも、二人とも初対面みたいだったし…。
「ねえ、桃華ちゃん。これで良いかな?」
「あっ、はい!大丈夫だと思います。」
……他人のことに、私が口出すべきじゃないか。
後で少し聞いてみて、お互い何も知らなかったらそこまでにしよう。




「八十治君と?……いやあ、僕は一人っ子でしたから……あっても異母兄弟くらいだと思いますよ。」
「…俺は、拾われた身ですから何とも……」
二人の答えは、予想以上に曖昧だった。
「でもまあ、僕としては八十治君は桃華ちゃんと似ていると思うんですよね。」
「「八十治(桃華様)と?」」
藤堂さんの唐突な一言に、二人揃って返す。
私と八十治が?
思わず八十治をじっと見つめた。
絹のような黒い髪の毛を右側で一つに結い、長く割と密度は低い睫毛に縁取られた藍色の瞳は吸い込まれそうなほど大きい。
鼻筋はすっと通っており、唇は他の人より赤味が目立つ。
…こうして見ると、整っているなあ…。
対して藤堂さんは、ふわふわした少し短めな焦げ茶色の髪の毛を左側で一つに結っている。
密度が濃い睫毛の中の瞳は飴色。
鼻は八十治に比べると低く小さく、唇は桜色。
……どうしてもこの美形な二人(八十治)と私が似ているとは思えないのだけど…。
「(…さらさらした長い焦げ茶色の髪の毛を後ろで一つに結い、短いながらも密度が濃い睫毛に包まれた瞳は薄茶色。鼻は高め、唇は桜色…。肌は陶器のように白く美しい。人とは思えないほど整ったお顔だ……流石は桃華様…)」
………何故か八十治の考えがとてもよくわかります。美化しすぎです。
はあ、とため息を吐きながら二人をもう一度見た。
「…何か妙な空気になっちゃいましたね。
どうします?僕たちのこと、監察の人に調べてもらいますか?」
「そこまでしなくても……」
というよりかは、山崎さんのことだからもう調べている気がする。
藤堂さんも、ですよね、と頷いた。
「まあ、お互い何かわかれば報告しましょうか。
じゃ、僕たちこれから巡察があるので!」
「はい、いってらっしゃい。」
八番組は巡察かあ………じゃあ稽古はつけてもらえない、か。少し残念だなあ。
よいしょ、と立ち上がると、私は自分の部屋へ戻ることにした。
今はやることがないし、じっとしていよう。
「お、麻木か…良いところに。
ちょっと甘いもん買ってきてくれるか?」
急に聞こえてきた声と目の前に現れた巾着に、はたと立ち止まる。
上を向くと、少し恥ずかしそうにこちらに巾着を差し出す土方さんの顔が見えた。
「甘いもの……おまんじゅうとかで平気ですか?」
「あー……団子…みたらしの。」
「はい、わかりました。」
土方さんの思わぬ一面にクスリと笑いながら巾着を受け取る。
みたらしのお団子、好きなのかな。
「悪いな、頼む。」
「直ぐに行ってきますね。」
私は土方さんに頭を下げると、やや早足で歩き出した。
土方さんが、お団子………わかるようなわからないような。
藤堂さんや斎藤さんあたりはよく似合う、と思う。
逆に八十治や沖田さんは似合わない訳ではないけど…少し不思議に思うだろう。
何が基準なんだかよくわからないけど…。
少なくとも土方さんは意外だ。
そんなことを考えながら屯所から出て少し歩くと、賑やかな街に出る。
みんな少し忙しないけど楽しそうで、この空気は結構好きだ。
「……ん…?」
しかし、少し前を異様な空気が流れていた。
浅葱色の羽織……新選組?
巡察中の八番組みたいだけど、街行く人皆が道を開けている……。
何かこそこそと話しているし、少なくとも良い雰囲気ではない。
「何故……」
「麻木。」
不意に呼ばれて振り向くと、そこには斎藤さんが立っていた。
「何をしている?」
「あ、土方さんのおつかいで…お団子を買いに。斎藤さんはどうされたんですか?」
「今日は非番ですることもないから用もなく…用もなく、街へ出たところだ。」
「そうなんですね。」
そう言うわりには両手には数々の甘いものが持たれているけれど…。
用もない、訳ではなさそうだ。
「甘いもの…お好きなんですか?」
「ぅあっ…!?あ、その…えっと…………平助!平助に頼まれてだな……!!」
私が聞いた途端顔を真っ赤にさせて慌てたように弁解する斎藤さんに、つい笑ってしまう。
別に悪いことじゃないのにね。
「そうですか。
…ところで、前の方の空気はどうしたんでしょうか……。重いというか何というか…」
「……あれか?」
斎藤さんが顎で示した方向は、やっぱり新選組。
斎藤さんも、感じてたんだ。
「京の人間は長州贔屓だから。この前の池田屋で良くも悪くも噂が広がったんだろうな。」
「長州……」
池田屋で戦った敵も、長州…。
でも、新選組は京を守ったのに。
「今は我慢しろ。そのうち、わかってくれるはずだ。」
「そう…ですね。」
納得した訳でもないけど、今私が何か言ったところで何も変わらないだろう。
今は仕方ない…のかな。
「ぉうわっ!!えっ!?!?はぁっ!?!??」
と、急に目の前に人が現れた。
不思議な…異国の人みたいな格好をして、驚いたふうにキョロキョロと辺りを見回している。
「へっ…!?え、江戸時代…?
いやいやいやいやいやいやそんな訳…痛ったい!夢じゃない…!?
お、おねーさん!今ここ、何年ですか!?」
がしっと肩を掴まれ、思わず私は硬直した。
何故って…
「さ、斎藤さん…?」
斎藤さんに、とてもよく似ていたから………

土方さん、変なやつみたいになってますね(笑)
見た目の説明をするの、結構好きです。…ちょっと自分でも何言ってるのかわからないときあるけど…。
<2017/01/29 17:36 水瀬 玲>消しゴム
Copyright(C) おためし小説投稿 Since2013 All Rights Reserved.