「えっと、おはよう。ん〜、なんか違うな。おはよっ!これも違う……。」
電柱にもたれかかってひとりブツブツ唱える。只今、絶賛挨拶練習中。今まで妹として見てきた莉央が突然彼女になっただけで、接し方が急に分からなくなった。挨拶の仕方も、話してたことも、登下校の方法も。当たり前が当たり前でなくなって、これからどうしたらいいのか不安になる。本当に幸せにできるのだろうか。誓ったその日には既に自信を失い、今に至っている。くよくよしてもしょうがない。ため息を一つついて、イヤホンを耳に差し込んだ。こういう時は音楽を聴きながら読書するのが一番いい。文庫本を取り出し、読み始めた。
活字を目で追い始めてから数分して、急に音が小さくなった。軽くなった左耳を、優しい風が吹き抜ける。それが吐息だと理解するまでに時間がかかった。
「おはようございます。」
囁き声に反応して身体がビクッと仰け反る。甘く柔らかな声の主は、クックッと喉を鳴らして笑っていた。反射的にじっと見つめると、ほんのりと頬を染めてこちらを覗き見る。恥ずかしいのを堪えてなおも見つめると、恥ずかしそうに笑った。
「おはよう。」
「お、おぅ…。」
あんなに練習したのに、彼氏彼女になって初めての挨拶がこれ。本当なら髪を掻きむしって叫びたいが、それは想像にとどめておくとしよう。ひとつ深呼吸をして改めて彼女を見ると、紅く染まった頰を隠すように口元に手を持っていっているが、じっとこちらを見ている。今更だが、かなりの美少女だと思う。そんなことを、彼氏になった色めだ、と振り払い、莉央の方に向き直る。
「可愛い……。」
莉央の頰が一気に紅く染まり、驚きを隠せないという表情で立っている。当の俺も、自分の口から出た予想外の言葉に顔から火が出るほど恥ずかしいと思った。
「あ、いや、えっと…」
「嬉しい。」
ボソッとつぶやかれた言葉に目を丸くする。彼女はというと、紅くなったままこちらを見た。ありがとう、と付け足してふんわりと笑った。十数年一緒にいて初めての感覚だった。胸がときめいたのだ。
「うん…。い、行こっか。」
こくりと頷く彼女を隣に、俺はゆっくり歩き出した。
電柱にもたれかかってひとりブツブツ唱える。只今、絶賛挨拶練習中。今まで妹として見てきた莉央が突然彼女になっただけで、接し方が急に分からなくなった。挨拶の仕方も、話してたことも、登下校の方法も。当たり前が当たり前でなくなって、これからどうしたらいいのか不安になる。本当に幸せにできるのだろうか。誓ったその日には既に自信を失い、今に至っている。くよくよしてもしょうがない。ため息を一つついて、イヤホンを耳に差し込んだ。こういう時は音楽を聴きながら読書するのが一番いい。文庫本を取り出し、読み始めた。
活字を目で追い始めてから数分して、急に音が小さくなった。軽くなった左耳を、優しい風が吹き抜ける。それが吐息だと理解するまでに時間がかかった。
「おはようございます。」
囁き声に反応して身体がビクッと仰け反る。甘く柔らかな声の主は、クックッと喉を鳴らして笑っていた。反射的にじっと見つめると、ほんのりと頬を染めてこちらを覗き見る。恥ずかしいのを堪えてなおも見つめると、恥ずかしそうに笑った。
「おはよう。」
「お、おぅ…。」
あんなに練習したのに、彼氏彼女になって初めての挨拶がこれ。本当なら髪を掻きむしって叫びたいが、それは想像にとどめておくとしよう。ひとつ深呼吸をして改めて彼女を見ると、紅く染まった頰を隠すように口元に手を持っていっているが、じっとこちらを見ている。今更だが、かなりの美少女だと思う。そんなことを、彼氏になった色めだ、と振り払い、莉央の方に向き直る。
「可愛い……。」
莉央の頰が一気に紅く染まり、驚きを隠せないという表情で立っている。当の俺も、自分の口から出た予想外の言葉に顔から火が出るほど恥ずかしいと思った。
「あ、いや、えっと…」
「嬉しい。」
ボソッとつぶやかれた言葉に目を丸くする。彼女はというと、紅くなったままこちらを見た。ありがとう、と付け足してふんわりと笑った。十数年一緒にいて初めての感覚だった。胸がときめいたのだ。
「うん…。い、行こっか。」
こくりと頷く彼女を隣に、俺はゆっくり歩き出した。
