妖しく光らん恋の影
- 一話 光あらわる妖の里 -
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野山を走る、走る、走る。
もうどのくらい走っただろうか。なぜこんな目に遭わなければいけないのか。そんな疑問が頭をよぎる。でも今の私は立ち止まってはいけない。立ち止まればきっと、私は殺されてしまう。
死にたくないーーー。
この想い一つだった。でも、それももう終わりだ。足がもつれ、ついに膝をついてしまった。足音から奴らがすぐそこまで来ていると悟った今も重い足を動かす気には、なれなかった。何よりそれを、奴らは許してはくれないだろう。
「松笠家、最後の末裔。松笠雪葉。
間違いはないな」
大柄の凛々しい目をした男だった。
こいつじゃ、ない。姉様を殺したのは......。
「おい、質問をしている。答えろ」
どうせ死ぬのなら最期まで松笠の名を誇って逝きたい。だから、顔を上げまっすぐその目に視線を返す。
「はい。間違いありません」
おそらく最期になるであろう言葉。
それはたったの二言で、私の誇りと自信にありふれた言葉でもあった。
私はそれで満足だった。
カチャ、金属音がして刀が抜かれる。
覚悟はしていたもののいざとなると怖いものだ。首筋にあたったひんやりとした感触は、私に生死の境目を思い知らせるには、ちょうどよかった。
「散れ。最期の末裔よ」
怖さにまぶたを閉じる。
戸惑いのない刀が引かれたとき、
鮮やかな血飛沫がいつもと変わらない虚しい空を彩った。
死んだはずの私が目を覚ました場所は夜の静まり返ったさら地。柱に手だけくくりつけられ一切の身動きを制限されていた。まるで状況が掴めない。とりあえずこの拘束を解く手立てを考えた。この空間に誰もいない、なんてことはあまりに非現実的すぎる。きっと誰かしらはいるだろう。そこでだ。
「すみません。用を足しとうございます!急ぎです、どうか誰でも良いのです。お願いします!」
「ほう......。用を足したいと、そういったか。」
その返事はすぐに返ってきた。妙に落ち着いた物言いは私の不安を容赦なく煽る。
「は、はい。行きとうございます。」
炎が近づいてくるにつれ、その正体が私にもはっきり見えた。
少なくとも「人」ではない、なにか。いよいよ私の前に立つと私の顎を軽く持ち上げ、言う。
「苦し紛れの嘘なんかつかなくても拘束はときますから。」
ほっとしたのもつかの間。耳を疑った。
「お帰りなさい。光雪様。」
もうどのくらい走っただろうか。なぜこんな目に遭わなければいけないのか。そんな疑問が頭をよぎる。でも今の私は立ち止まってはいけない。立ち止まればきっと、私は殺されてしまう。
死にたくないーーー。
この想い一つだった。でも、それももう終わりだ。足がもつれ、ついに膝をついてしまった。足音から奴らがすぐそこまで来ていると悟った今も重い足を動かす気には、なれなかった。何よりそれを、奴らは許してはくれないだろう。
「松笠家、最後の末裔。松笠雪葉。
間違いはないな」
大柄の凛々しい目をした男だった。
こいつじゃ、ない。姉様を殺したのは......。
「おい、質問をしている。答えろ」
どうせ死ぬのなら最期まで松笠の名を誇って逝きたい。だから、顔を上げまっすぐその目に視線を返す。
「はい。間違いありません」
おそらく最期になるであろう言葉。
それはたったの二言で、私の誇りと自信にありふれた言葉でもあった。
私はそれで満足だった。
カチャ、金属音がして刀が抜かれる。
覚悟はしていたもののいざとなると怖いものだ。首筋にあたったひんやりとした感触は、私に生死の境目を思い知らせるには、ちょうどよかった。
「散れ。最期の末裔よ」
怖さにまぶたを閉じる。
戸惑いのない刀が引かれたとき、
鮮やかな血飛沫がいつもと変わらない虚しい空を彩った。
死んだはずの私が目を覚ました場所は夜の静まり返ったさら地。柱に手だけくくりつけられ一切の身動きを制限されていた。まるで状況が掴めない。とりあえずこの拘束を解く手立てを考えた。この空間に誰もいない、なんてことはあまりに非現実的すぎる。きっと誰かしらはいるだろう。そこでだ。
「すみません。用を足しとうございます!急ぎです、どうか誰でも良いのです。お願いします!」
「ほう......。用を足したいと、そういったか。」
その返事はすぐに返ってきた。妙に落ち着いた物言いは私の不安を容赦なく煽る。
「は、はい。行きとうございます。」
炎が近づいてくるにつれ、その正体が私にもはっきり見えた。
少なくとも「人」ではない、なにか。いよいよ私の前に立つと私の顎を軽く持ち上げ、言う。
「苦し紛れの嘘なんかつかなくても拘束はときますから。」
ほっとしたのもつかの間。耳を疑った。
「お帰りなさい。光雪様。」
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