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紅に染まる
- 愛するあの娘 -

「グーレールっ。 フィオナ様の登場よ」

待ち合わせ場に現れた彼女は下から俺の顔をのぞきこむ。
小柄な彼女は高いヒールを履いているがまだ背が低い。

まったく、しれっとそういう冗談を言う。
美しいロングの赤毛を巻き、真っ赤なルージュをつけた
まさに女王のような容姿のお陰で
本当に俺がそういう趣味って思われたらどうする気なのか,,,


「ようよういらっしゃいましたね、っと。  じゃ、行こう」

手をすっと差しのべてみると、彼女は頬を赤らめながら
俺の腕にぎゅっと掴まり、一緒に歩き出した。
行く先は森の奥の崖。そこから見る海は素晴らしく美しい。
日が沈む時、ルビーのような輝きを放ち、辺りは真っ赤に染まる。
俺とフィオナは少し離れたその海で夕日を二人寄り添って
眺めるのが大好きだった。


「こうして行けるのもあと何回かしら?」


丸く大きい瞳を少し伏せ、物憂げに呟いた。
フィオナには婚約者がいるから俺達はもうすぐ切られてしまう。


「そうだな,,,」


結婚なんて、しないでくれ

その一言が言えない。絶対に、言えない。
何せ相手は貴族、貴族と結婚した方が幸せになれるに決まってる。
俺はフィオナの幸せを願うだけで,,,それだけでいい。



「見えた,,,! 」


二人の声がぴったりと重なる。
それだけのことで鼓動が速くなる。
嬉しくて嬉しくて、どうしようもないくらいに。


「まだ時間があるし、お茶でもしましょう」


手際よくティーセットを取り出しながら彼女は言った。
カップを受け取り、紅茶を淹れてもらう。
砂糖を少しもらって、一口飲む。
美味しい。淹れ方が上手なのだろう。
すべて飲み干し、俺は訪ねた。


「なぁ」


彼女は手を止め、こっちを見つめた。



「婚約者,,,いいやつか」


少しぶっきらぼうに言ってみる。
彼女の表情が凍る。


がさり。木の葉が数回揺れ動き、1匹のリスがすっと通っていった。


「あの人は,,,ね」


ゆっくりと、怯えたように話し始めた彼女をそっと抱き寄せ、頭を撫でる。
俺の胸の中で、彼女は続けた。


「怖い。怖いひと。お屋敷にいくと、奥の部屋へつれていかれて、そこで
ずっと、ずっと座り続けなきゃいけないの。
それに駒鳥だかなんだかわからないけれど、私をそう呼ぶの。
エラヴィート様には前に奥さんがいて,,,その間の子が
アレイスト坊っちゃんって子で。
その子もなんだか変,,,私をずっと観察し続けるの」


いつもは綺麗な眉間にしわを寄せ、
目を真っ赤にして彼女は語った。


彼女の頬を大粒の涙が伝った。


「う,,,ごめん、我慢できなかったや」


グレルの前ではずっときれいでいるって決めてたのにな、と彼女が笑う。


「ありがとう、聞いてくれて」



ぐにゃりと視界がゆがむ。 え?



「ごめんなさい、グレル」



彼女が何か銀色に光る長いものを持っている。



「止めようとするでしょう」



意識がもうろうとしてくる。


「な,,,」


必死で絞り出した言葉は彼女の最期の一言に掻き消された。




あ   い   し   て   る



その言葉とこの唇に触れた柔らかな感触。そこで俺の意識は途絶えた。







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「,,,!」



誰もいない。どうしよう。
脚が震えて動かない。なんだよ、俺,,,







<2016/06/14 01:10 ぽんぬすぽんぬ>消しゴム
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