鈍感のくせにモテるヤツ
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「栞の好きな人は桂馬君だもんね?」
恋話が始まるといつもこうだ。終わった恋をいつまでもからかう友達。ちょっとその人の話をするといつもこの展開だ。好きな時にからかわれるのは、恥ずかしいけど嫌じゃない。だけど、一旦終わってしまった恋をからかわれると反応に困る。もう好きじゃないと知っていても、わざとからかってくるのだ。
「だから、好きじゃないって!」
そんな言葉は、届いていても受け入れられない。私、天城栞は高校一年生。今日も、ちょっと困った友達に苦戦中です。
私が五年前から三年間、つまり小学五年生から中学一年まで好きだった人は、天野桂馬という。彼とは小学校から中学を卒業するまでずっと同じクラスだった。それに出席番号もほぼ前後で、班作り、調理実習、日直など、いろんな場面で同じになった。だけど好きになったのは小学五年生の時。今考えると、なんでそんな時期に好きになったのかわからないが。
天野のことが好きだった。どこが?と聞かれるとよくわからないけど、ずっと目で追っていた。うぬぼれかもしれないけど、かなり仲もよかった。天野はイタズラが大好きで、それは中学を卒業するまで変わらなかった。高校が別になった今では知ることもないが…………。
五年生の時。保護者バレーの練習に、私がついて行くと、天野も来ていた。保護者バレーについて来ると、夜真っ暗な中、みんなで遊ぶことができる。みんな怪談話をしていたが、私と天野はその中に入っていなかった。私たちは二人でグラウンドを走っていた。天野が走っているのを見つけて、
「私も走ろー!」
とか言って隣に並んで走り出した。今考えたらあの頃の自分は大胆だと思う。
だけどこの鈍感男は、何にも気づいていなかった。
時は飛んで小学六年生、後期児童会決めの時である。親友が会長に立候補したので、私も副会長に立候補した。そのまま私たちは決まったが、その他のポジションが決まらない。廊下では、嫌々児童会に入ることになったメンバーがどのポジションにつくかを話し合っていた。その中に、天野の姿があった。心の中で、もう一枠空いていた副会長に来い!と祈った。天野は副会長に決まり、私の願いは届いたかと思った。しかし、先生は余計なことをしてくれた。
「議長二人で不安なら、天野もいれて三人でするか?」
その余計な一言で、議長が三人、副会長一人になった。天野と一緒になれるどころか、副会長の仕事を一人に押し付けられた。
(副会長一人とか、聞いたことないんですけど!?)
実際、副会長一人なんて今までなかった。納得はできなかったが、それでも同じ児童会として活動できるということをポジティブに考えて乗り越えた。児童会の仕事は、大変だったけど楽しかった。
メンバーがとても面白い人ばかりだったのだ。活動で集めたキャップで遊んだりした。そんな活動室には、児童会メンバー以外に一人の女子が出入りしていた。私と同じく、天野が好きな花音ちゃんだ。花音ちゃんも天野が好きで、私よりも積極的だった。彼女の恋心はバレバレだった。女子はみんな気がつくくらい。花音ちゃんは、仲のよかった私に会いに来るのを口実に、天野に会いに来ていたのだ。私としては正直面白くない。その上もう一人、天野のことを好きな女子が児童会室にはいた。ひとつしたの五年生で児童会に入った空ちゃんだ。同じテニス部ということで、二人は仲がよかった。花音ちゃんと空ちゃんは、二人して天野にちょっかいを出して遊んでいた。そんな児童会室はいつもどんちゃん騒ぎだった。私も当然楽しかった。だけど、好きな人とライバルが仲よくしているのを見るのは、楽しいという気持ちと同じくらい辛かった。こいつ鈍感だ、とみんな思っていた。そして彼についたのは「鈍天野」だった。だけど、なんで鈍感と言われるのかわからないと言う天野。やっぱり鈍感だった。
いつだったか、私は天野と二人でテストがあるたび勝負をしていた。小学校のテストは裏表あわせて百五十点満点である。負けたほうが勝ったほうの言うことを聞くという単純ルール。私はいつも勝った。だけど一度、負けたことがある。その時天野から出された命令は
「お前の好きな人を教えてな!」
だった。その瞬間頭の中はパニック状態だ。本音を言うべきか、架空の人物の名を言うべきか。その日の放課後、授業が終わった後にある、参加自由の学び塾に行っていた。行くと言っても、二階の教室を利用してプリントを解くだけだが。
その日は挨拶が遅くなり、遅れないようみんな急いで二階に向かっていた。命令もうやむやにしてしまおうかと考えていた矢先、天野が隣に追いついてきた。
「おい!好きな人誰なん!?」
本当こいつ鈍感か!と言いたくなる。なんでこんな質問をしてくるのか、わからなかった。私は急いでいた勢いで
「お前だよ!!」
と言った。
「はぁ!?俺?」
ああ、やっぱりこいつ鈍感だ…………。分かりやすい私の好意に気づいてこんな質問をしたのかと思ったが、違ったようだ。
走っているうちに教室に到着し、そのまま始まってしまった。
結局、冗談だと思われたのだろう。返事はなかった。
告白したけど、二人の関係は良くも悪くも変わってはいたかった。そうして中学一年生になった。クラスが一緒と知って飛び上がった。入学してすぐにある研修でも同じ班になることができた。
その研修で夕食を食べているとき、また天野は鈍感を発揮した。
「天城、これ食べて。」
天野が箸でつまんで見せたのは私も嫌いな椎茸だった。一瞬動揺した。椎茸だったからじゃない。
(あんたもう箸つけて食べたじゃん!?それをあげるとか言うか?普通!)
この男は本当に鈍感だ。普通男子にあげるだろ!とツッコミたい気持ちを抑え、いいよ、と答えた。すると、同じ班だった別の小学校出身の男子が、
「はーい。それ、間接キスだと思いまーす。」
その男子はからかうように爆弾発言を投げてきた。
「はぁ?なんで?」
鈍感男は理由がわからないようだ。私は恥ずかしくなったが、わざと知らぬ振りをしてご飯を食べた。
しかし、中学での恋心は長く続かなかった。天野はまわりの友達の影響で、小学校の時よりも生意気になった。私にちょっかいをかけるのはかわらなかったが、それが私には鬱陶しく感じた。ちょっかいのレベルを越えたことをしてくるようになったのだ。やることが幼稚園児みたいなことばかり。私はだんだんそれにイライラするようになり、天野とケンカが増えた。だけど、私はいつも負けた。私は正論で話しているのに、天野は子供みたいなことばかり言ってきて、反論の余地を与えなかった。私は耐えられず、何度もこっそり泣いた。時には卓球のラケットを出して振り回したこともあった。
そんな経緯で私は彼を嫌いになったのだ。そうして、私の三年間の片想いは終わった。
そんな過去を思い出しながら、まだ恋話は続いている。
「でもさ、小学校同じだった人のほとんどのは、一度は天野を好きになった人が多いらしいよ。特に初恋な。」
そう言った友達に続くように、何人かが私も~!などと同感し始めた。その後も、何ちゃんと何ちゃんと…………と名前をあげ始めた。結構いるようだ。
「ふん。知らんなあんな鈍感男!」
私が怒ったように言うと、みんなが頷いた。
「ほんと、鈍感でもったいないな。顔はかっこいいのに。」
確かに顔は…………とみんなが頷いた。
「で、栞は天野君が好きなんやろ?」
話が戻ってきた。
「だから!知ってるでしょ!大嫌いなの!」
私が怒ると、友達達は笑った。
そう、あんな鈍感男、大嫌いだ…………。
栞はもう一度小さく呟いた。
恋話が始まるといつもこうだ。終わった恋をいつまでもからかう友達。ちょっとその人の話をするといつもこの展開だ。好きな時にからかわれるのは、恥ずかしいけど嫌じゃない。だけど、一旦終わってしまった恋をからかわれると反応に困る。もう好きじゃないと知っていても、わざとからかってくるのだ。
「だから、好きじゃないって!」
そんな言葉は、届いていても受け入れられない。私、天城栞は高校一年生。今日も、ちょっと困った友達に苦戦中です。
私が五年前から三年間、つまり小学五年生から中学一年まで好きだった人は、天野桂馬という。彼とは小学校から中学を卒業するまでずっと同じクラスだった。それに出席番号もほぼ前後で、班作り、調理実習、日直など、いろんな場面で同じになった。だけど好きになったのは小学五年生の時。今考えると、なんでそんな時期に好きになったのかわからないが。
天野のことが好きだった。どこが?と聞かれるとよくわからないけど、ずっと目で追っていた。うぬぼれかもしれないけど、かなり仲もよかった。天野はイタズラが大好きで、それは中学を卒業するまで変わらなかった。高校が別になった今では知ることもないが…………。
五年生の時。保護者バレーの練習に、私がついて行くと、天野も来ていた。保護者バレーについて来ると、夜真っ暗な中、みんなで遊ぶことができる。みんな怪談話をしていたが、私と天野はその中に入っていなかった。私たちは二人でグラウンドを走っていた。天野が走っているのを見つけて、
「私も走ろー!」
とか言って隣に並んで走り出した。今考えたらあの頃の自分は大胆だと思う。
だけどこの鈍感男は、何にも気づいていなかった。
時は飛んで小学六年生、後期児童会決めの時である。親友が会長に立候補したので、私も副会長に立候補した。そのまま私たちは決まったが、その他のポジションが決まらない。廊下では、嫌々児童会に入ることになったメンバーがどのポジションにつくかを話し合っていた。その中に、天野の姿があった。心の中で、もう一枠空いていた副会長に来い!と祈った。天野は副会長に決まり、私の願いは届いたかと思った。しかし、先生は余計なことをしてくれた。
「議長二人で不安なら、天野もいれて三人でするか?」
その余計な一言で、議長が三人、副会長一人になった。天野と一緒になれるどころか、副会長の仕事を一人に押し付けられた。
(副会長一人とか、聞いたことないんですけど!?)
実際、副会長一人なんて今までなかった。納得はできなかったが、それでも同じ児童会として活動できるということをポジティブに考えて乗り越えた。児童会の仕事は、大変だったけど楽しかった。
メンバーがとても面白い人ばかりだったのだ。活動で集めたキャップで遊んだりした。そんな活動室には、児童会メンバー以外に一人の女子が出入りしていた。私と同じく、天野が好きな花音ちゃんだ。花音ちゃんも天野が好きで、私よりも積極的だった。彼女の恋心はバレバレだった。女子はみんな気がつくくらい。花音ちゃんは、仲のよかった私に会いに来るのを口実に、天野に会いに来ていたのだ。私としては正直面白くない。その上もう一人、天野のことを好きな女子が児童会室にはいた。ひとつしたの五年生で児童会に入った空ちゃんだ。同じテニス部ということで、二人は仲がよかった。花音ちゃんと空ちゃんは、二人して天野にちょっかいを出して遊んでいた。そんな児童会室はいつもどんちゃん騒ぎだった。私も当然楽しかった。だけど、好きな人とライバルが仲よくしているのを見るのは、楽しいという気持ちと同じくらい辛かった。こいつ鈍感だ、とみんな思っていた。そして彼についたのは「鈍天野」だった。だけど、なんで鈍感と言われるのかわからないと言う天野。やっぱり鈍感だった。
いつだったか、私は天野と二人でテストがあるたび勝負をしていた。小学校のテストは裏表あわせて百五十点満点である。負けたほうが勝ったほうの言うことを聞くという単純ルール。私はいつも勝った。だけど一度、負けたことがある。その時天野から出された命令は
「お前の好きな人を教えてな!」
だった。その瞬間頭の中はパニック状態だ。本音を言うべきか、架空の人物の名を言うべきか。その日の放課後、授業が終わった後にある、参加自由の学び塾に行っていた。行くと言っても、二階の教室を利用してプリントを解くだけだが。
その日は挨拶が遅くなり、遅れないようみんな急いで二階に向かっていた。命令もうやむやにしてしまおうかと考えていた矢先、天野が隣に追いついてきた。
「おい!好きな人誰なん!?」
本当こいつ鈍感か!と言いたくなる。なんでこんな質問をしてくるのか、わからなかった。私は急いでいた勢いで
「お前だよ!!」
と言った。
「はぁ!?俺?」
ああ、やっぱりこいつ鈍感だ…………。分かりやすい私の好意に気づいてこんな質問をしたのかと思ったが、違ったようだ。
走っているうちに教室に到着し、そのまま始まってしまった。
結局、冗談だと思われたのだろう。返事はなかった。
告白したけど、二人の関係は良くも悪くも変わってはいたかった。そうして中学一年生になった。クラスが一緒と知って飛び上がった。入学してすぐにある研修でも同じ班になることができた。
その研修で夕食を食べているとき、また天野は鈍感を発揮した。
「天城、これ食べて。」
天野が箸でつまんで見せたのは私も嫌いな椎茸だった。一瞬動揺した。椎茸だったからじゃない。
(あんたもう箸つけて食べたじゃん!?それをあげるとか言うか?普通!)
この男は本当に鈍感だ。普通男子にあげるだろ!とツッコミたい気持ちを抑え、いいよ、と答えた。すると、同じ班だった別の小学校出身の男子が、
「はーい。それ、間接キスだと思いまーす。」
その男子はからかうように爆弾発言を投げてきた。
「はぁ?なんで?」
鈍感男は理由がわからないようだ。私は恥ずかしくなったが、わざと知らぬ振りをしてご飯を食べた。
しかし、中学での恋心は長く続かなかった。天野はまわりの友達の影響で、小学校の時よりも生意気になった。私にちょっかいをかけるのはかわらなかったが、それが私には鬱陶しく感じた。ちょっかいのレベルを越えたことをしてくるようになったのだ。やることが幼稚園児みたいなことばかり。私はだんだんそれにイライラするようになり、天野とケンカが増えた。だけど、私はいつも負けた。私は正論で話しているのに、天野は子供みたいなことばかり言ってきて、反論の余地を与えなかった。私は耐えられず、何度もこっそり泣いた。時には卓球のラケットを出して振り回したこともあった。
そんな経緯で私は彼を嫌いになったのだ。そうして、私の三年間の片想いは終わった。
そんな過去を思い出しながら、まだ恋話は続いている。
「でもさ、小学校同じだった人のほとんどのは、一度は天野を好きになった人が多いらしいよ。特に初恋な。」
そう言った友達に続くように、何人かが私も~!などと同感し始めた。その後も、何ちゃんと何ちゃんと…………と名前をあげ始めた。結構いるようだ。
「ふん。知らんなあんな鈍感男!」
私が怒ったように言うと、みんなが頷いた。
「ほんと、鈍感でもったいないな。顔はかっこいいのに。」
確かに顔は…………とみんなが頷いた。
「で、栞は天野君が好きなんやろ?」
話が戻ってきた。
「だから!知ってるでしょ!大嫌いなの!」
私が怒ると、友達達は笑った。
そう、あんな鈍感男、大嫌いだ…………。
栞はもう一度小さく呟いた。
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